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探偵L・ロサンジェルス編~墜ちた天使たち~(8)
   探偵L・ロサンジェルス編~墜ちた天使たち~(8)

 メロとジョシュアのふたりが広い学食で、ハンバーガーやポテトなどを食べていると、隣の空いた席に「ハイ」と言ってアリスが座った。
「ルー……じゃない、アリス。こんにちは」
「こんにちは」
 メロも、ハンバーガーを食べながらふたりの親密さに気づかないほど馬鹿ではない。しかも、ジョシュアは最初に「ルー……」と彼女の本当の名前を言いかけたようだった。
(やれやれ。やっぱりアリスってのは偽名か。第一こいつと彼女はそれぞれ、違う国からやってきた転校生ってことになってる。他に共通点は一切ないにも関わらず、かたや学校の落ちこぼれ、かたや学校一の才媛……それで親しいなんて、絶対おかしいだろ)
 意外に今回の任務は簡単なものかもしれないと、この時メロは初めて思った。超能力者だなんて言うから、一体どんな奴らが相手かと思えば……その正体はなんていうこともない、どこにでもいる普通のティーンエイジャーだった。ラスティスもそうだったが、アリスにしてもジョシュアにしても、超能力を持っているというだけで、それ以外は本当に<普通>と何も変わりはないのだ。
「あんた、こいつと親しいのか?」
 食後にチョコレートを一枚食べながら、メロはサンドイッチを食べているアリスに聞いた。彼女は何故か一瞬、ドキリと警戒したように見える。
「え、ええ。ほら、転校してきた時期が一緒だったから……クラスは違っても、お互い印象に残ってるっていうか……」
(嘘ついてんのが見えみえだな)
 メロは最初、例のマトリックス野郎を監視するのが第一の優先事項だと思っていた。だが、他の超能力者と思しき人間と対面してみて、もしかしたらこちらから切り崩したほうが早いのかもしれないと、そう思い直す。
(しかし、ユリ・ゲラーについてどう思うか?なんて聞いたところで、むしろ警戒されるだけだろうしな。暫くの間はこのまま、様子を見ることにするか……)
 もちろん、彼らの能力がどんなものかを試そうと思えば出来ないことはない。だが、それではあまりに危険が大きすぎた。先ほど、ジョシュアが絡まれていた場面から察するに、彼にもし強い超能力が本当にあるなら、何がしかの反撃にでるか、あるいはふたりとも何日か以内に不慮の事故にでも遭っているに違いない……だが、ジョシュアが自分で「暴力は嫌いだ」と言ったとおり、彼は本当にそのように信じているようだった。
(瞬間移動能力があり、自分の足で移動する必要がないから太っていると考えるのは、流石にちょっと発想として突飛すぎるか?だがこいつのこの食いっぷりを見てると、普段から超能力を使ってるので、その反動として異常なほど食欲が旺盛なんじゃないかと思えるんだが……)
 ハンバーガーを二十個ほども平らげるジョシュアの隣にいても、アリスは別段、恥かしくもなんともないようだった。彼の食欲に比べると、アリスのは胃袋の小さいウサギのそれといった感じだが、メロはよもや彼女が、自分のことを意識するあまりちんまりとしか物を食べられないのだとは、思いもしない。
(どうしよう。今言わなきゃ……じゃないとメロのこと、他の女の子に取られちゃうかも……)
 アリスはクラスの女の子たちが、トイレで化粧直しをしながら話していたことを知っている。週末にバーバラの家であるパーティに彼を招待しようと相談していたことや、「彼って超イケてない!?」と、語尾上がりで話していたことを。また自分が手を洗おうとすると、不倶戴天の敵でも見るような目で彼女たちは睨みつけてきたし、モニカに至ってはつい先日までルークに熱を上げていたにも関わらず――「いい男を独り占めしないでよね。最低でもルークかメロ、どっちかにして。そしたらあんたもパーティに招待してあげなくもないわよ」と、ハッキリ言ってきた。
 もちろん、そんなくだらないパーティはこっちから願い下げだった。けれどもし、メロが週末にバーバラのパーティへ行くとしたら……何かがすべて変わってしまいそうだとアリスは思っていた。それで、大麻やコカインといった薬物使用についてメロがどう思っているか、さりげなく聞いてみたかったのだ。もしメロがドラッグ容認派だとすれば、その夜彼はバーバラかあるいは、他のパーティに招待された女の子のひとりと寝てしまうだろう。そんなのは絶対嫌だとアリスは思った。
「あ、あの、メロ……」
 微かに上ずった声でアリスが言いかけた時、すぐ隣でガチャリ、とトレイを置く大きな音がした――彼女の幼馴染みのルーク・フォスターだった。
(ミスター・マトリックスのお出ましか)
 チョコレートの最後の一欠片をぽいと口の中へ放りこみながら、メロは(どうしたもんかな)と思う。正直、ルークのむっつりした顔つきからして、自分の半径五メートル以内に近づくなと書いてあるのがよくわかる……だが、せっかく超能力者が三人も目の前に揃ったのだ。様子を見させてもらわない手はないと、メロはそう思った。
「おまえ、メシ食い終わったんなら、さっさとどっか行けよ」
 ルークはピザを口許へ持っていきながら、いかにも不機嫌そうに眉根を寄せている。それで、メロはやはり席を外すことにした。ルークとジョシュア、それにアリスの三人が食事をしているのをただ観察するのは不自然だったし、とにかくここまで近づいてさえしまえば……あとはもういくらでも、手の打ちようはある。
「あ、メロ。待って!!」
 アリスは、サンドイッチの乗ったトレイを片付けると、足早にメロの後を追った。実際には半分もまだ食事を終えてはいなかったが、ここで彼のことを逃したら、別の女の子が廊下のあたりで声をかけるのは必至だった。
「なんだ?おまえ、まだ半分もメシ食ってないだろ?」
「ちょっと食欲がなくて。そんなことより……」
 アリスが微かに上ずった声でそう言うと、メロは彼女の肩を軽く抱いてカフェテリアを出た。ちらりと肩越しに振り返ると、ルークが怒りの形相でもってこちらを睨みつけているのがわかる――メロはそんな彼と一度だけ視線を交わすと、わざと勝ち誇ったような表情を浮かべてやった。
「……あの野郎!!」
 急いでアリスとメロのあとを追おうとしたルークを、そばで様子を見ていたバスケ部の副主将が止める。ちなみに部のキャプテンはルークだった。
「やめとけよ、ルーク。アリスはどのみちおまえのものにはならないんだから、もっと身近なところで手を打っておけって」
「そんなこと、なんでおまえにわかる?」
 副主将のレイフ・ウィンクラーは軽く肩を竦めながら言う――「なんでもさ」
(というより、おまえ以外の連中は全員わかってるって)
 レイフは、カフェテリアにいた生徒がこちらに注目の視線を投げているのを見て、キャプテンの素行について甚だ疑問に感じる。言ってみればアリス・リードは理系の才媛だ。反してルークは学力の平均が3.5以下の、頭が筋肉で出来たスポーツ馬鹿タイプなのである……レイフは優秀なポイントガードである彼のことを尊敬してはいたが、普段冷静にゲームの組み立てを行える彼が、何故アリスのことになると目の色を変えるのか、皆目見当がつかなかった。
 そこへ、チアガール部のキャサリンとリンダが、レイフとルークの隣にやってくる。レイフはリンダと随分前からつきあっているが、彼女からはなんとかルークとキャサリンをくっつけるよう、耳にタコが出来そうなほど何度も言われている……デートの度に会話の半分以上がそのことで占められていると言ってもいい。
 チアリーダーのキャサリンが、どんなにルークのことを想っていても、彼は彼女には目もくれず、アリスのことばかりを追っている。そしてアリスは、例の転校生のことがどうやら気になる様子だった。
(まあ、もしアリスがあいつとくっついてくれれば、ルークも諦めるだろう。だが、女って奴はせっかちだからな……くれぐれもいじめみたいな真似だけはしないよう、リンダにはきつく言っておかないと。もしキャサリンがその件に関与しなかったにしても、リンダが影で動いたとわかっただけで、ルークはキャサリンに目もくれなくなるだろうから)
「ダーリン、午後の授業は講堂でセックスについてUCLAの教授がご教示くださるらしいわよ」
「それはそれは」
 もうとっくに体の関係を持って結ばれているふたりは、食事をしながら意味ありげに笑う。対して、ルークはむっつりと怒った顔をしたままであり、キャサリンはそんな彼をなだめるのに必死だった。
 そしてジョシュアはといえば――ただもくもくと三十個以上ものハンバーガーを食べ続け、最後には大きなげっぷをしていたのだった。

 メロがアリスの肩を抱いてカフェテリアを出たのは、当然ルーク・フォスターに嫉妬させるためだった。もし、彼の嫉妬が限界を越えて高まれば、自分は近いうちに超常現象を体験することが出来るだろう……そう思った。たとえば、なんでもないようなところで転び、人前で恥をかかされるとか、突然バイクのブレーキが利かなくなって事故るといったようなことだ。
 もちろん、そうしたことは危険な確認方法ではあるが、直感としてメロはルークとは絶対的にわかりあえないとわかっていた。彼の嫉妬に燃える眼差しを見て思うのは、メロにとってはニアのことだった。彼の目を見ていて、自分はこんなふうにニアのことを見返していたかもしれないと思い、メロとしてはいささか気分が悪くなる。
「で、用ってなんだ?」
「えっと、三限目の授業でやったシェイクスピアの『マクベス』のことなんだけど……これから図書館にいって、少しその話をしない?」
 カフェテリアから外へでると、メロはアリスの肩をすぐに離してしまった。彼のその動作があまりに自然だったので、アリスは彼にとってそれは本当に何気ないことなのだろうと思った。けれど、彼がもし他の女の子に同じことをしたらと思っただけで――胸が締めつけられるように苦しくなる。
「『マクベス』か……あれも陰気な話だよな。それより、少し外へ出ないか?中庭に座って話でもしたほうが、しーんと静まり返った図書館より話しやすいだろ?」
「う……うん」
 どうしてこんなにドキドキするんだろうと思いながら、アリスは魔法にかかったような気持ちでメロと並んで歩いていく。学校の中庭では、木陰の芝生に座ったカップルたちが、くすくす楽しそうに笑ったり、ネッキングしたり、軽く抱きあったりしている。
 アリスはこうした世界と自分とは、それまでまったく無関係なのだと思っていた。もっといえば、ベタベタ体を触りあってニタニタするなんて馬鹿みたい、とさえ思っていた。でも、今は……。
 メロが緑の葉の生い茂った木の下に腰かけると、アリスもその横に座った。本当は、シェイクスピアのマクベスなんてどうでもいい。それに、もうすぐ昼休みが終わってしまうとも思い、彼女は単刀直入にメロに聞くことにした。
「……ねえ、バーバラとモニカに、週末のパーティに誘われなかった?」
「週末のパーティ?」と、メロは欠伸をしながら聞き返す。外に出て、ぽかぽかした陽気にあてられてるうちに、なんだかやたらと眠くなってきた。
「いや、べつに誘われてないな」
「えっとね、ふたりがメロのことパーティに誘いたいって言ってたの。でもああいうパーティって、ちょっと退廃的なところがあるっていうか……メロは転校してきたばかりだから、もしかしたらそういうこと、わからないかもしれないと思って」
「ふーん。まあべつに、そんなパーティ興味もないな」
(俺が今興味があるのは、あんたら超能力者だ)、心の中でそう思いつつ、木の幹にメロは寄りかかる。
「そうなの?」と、アリスは少し驚いた。バーバラの母親はハリウッド女優で、父親は某映画配給会社の重役だった。彼女が開催するパーティへは当然、誰もが行けるというわけではないのだ。その少ない招待状を受け取れるのは、学校でもほんの一握りの生徒だけなのに……。
「ようするにあんたは、俺にこう言いたいんだろ?そういうパーティじゃあ、未成年が酒を飲んで大麻やるってのが普通らしいからな。それで飲めないとかドラッグはやらないとか言うような奴は、当然ダサい奴ってことで馬鹿にされる……そういうところへは無防備に出かけないほうが無難だって、そう言いたいんだろ?」
「うん、そうなの」と、ほっとしながらアリスは言った。メロは思ったよりずっとわかっていると、そう思った。「あたしも一度だけ、転校してきたばかりの頃に、彼女のパーティへいったことがあるんだけど、やたら男の子とくっつけられそうになってうんざりしちゃった。ようするに、ルークを招待するダシに使われたっていう、それだけなのよね」
「あんた、あいつのことが好きなのか?」
「えっ……!?」
 ドキリとするあまり、アリスは思わず、メロから目を背けた。彼はまるで、アリスが嘘をつくかどうか見定めるみたいに、彼女のことをじっと見つめている。
「あいつって、ルークのこと?あたしたちはただの幼馴染みっていうか、本当にそれだけの関係よ。ルークはスポーツ一本槍だったから、小さい頃から勉強を教えてたっていう、ただそれだけ……彼がわたしに対して持ってる感情っていうのは、恋とかそういうものじゃないの。ただ、自分が持ってないものをあたしが持ってるから、その部分を尊敬してるうちに崇拝に近い気持ちになったっていう、それだけのことなのよ」
「へえ……」
 後方、斜め後ろのほうから、殺気にも近い眼差しを感じて、メロはそちらのほうにちらと目をやる。アリスはまだ気づいていないが、その茂みの中にはルークが隠れていた――もっとも、ふたりが話している会話までは聞きとれない距離ではあったが。
(あれが恋をしてない男のとる行動なら、一体どう説明すればいいんだろうな)と、メロはそう思う。偏執的というよりは、もはや異常なものさえそこからは感じとれる気がする。
(くそっ!あの野郎、ルースからもっと離れやがれ!)
 当のルークはそう思いながら、敵地を視察する兵隊よろしく、茂みの中に身を隠したままでいる。彼にしてみればメロは、鳶が油揚げをさらうという、まさにそのトンビだった。しかもやたら目つきの悪い、性悪のトンビだ。
(だが、こちらにはいざとなれば、切り札がある……)
 そう思いながらルークは、ふたりがイチャイチャする姿を、我慢しながら覗き見し続けた(彼の穿った目にはそうとしか見えないらしい)。
 ちょうどその時チャイムが鳴り、アリスが先に立ち上がる。メロもまた彼女と並んで講堂へ向かおうとするが、その途中で「ちょっと用事がある」と言ってアリスとは別れることにした。保健体育の授業など、面倒くさい。彼はただ、放課後にルーク・フォスターに用があるだけなのだ……いや、用があるというより、今日はとりあえず様子見といったところか。
 そんなわけで、メロは裏庭に適当な木があるのを見つけると、その上で退屈な保健体育の時間が過ぎ去るまで、昼寝をするということにしたのだった。



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【2008/09/17 01:22 】
探偵L・ロサンジェルス編 | コメント(2) | トラックバック(0)
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コメント
やっと続きが読めます!

この話の構成とかって、いつ考えているんですか?
ブログに貼る前とかって、下書きしてんですか?
【2008/09/17 22:40】
| URL | ヤマケン #-[ 編集] |
 ヤマケンさん、ありがとう~!!(^^)
 ええっ!?もしかして待っていてくださったんですか~(TT)←嬉泣☆
 あ、更新遅れたのって、実はこのシリーズの最後のアイスランド編書いてたからなんです♪
 話の構成は……ロシア編書いてた時から大体の骨組みは決まってて、あとは書きながら細かいところを詰めていく、みたいな??(←結構いいかげん・笑)
 下書きはワードでやってて、貼っつける時には軽く読み返します。そんで一度発表したら自分ではあまり読み返さないので、どっかに穴とかあったらどうしようwwってたまに思ったりしてます(汗)
 あ、実はわたしブログふたつ持ってて……リンクのところに『LMNノート』ってあるのがそれです。そっちではロサンジェルス編もその続きも終わってて、ちょっとラブえっち(爆☆)なLとラケルの小話とかも載せてます。
 なので、そっちで終わったものをこちらに転載してる形になるので、こっちは更新したりしなかったりでかなりいいかげんなんです(汗)
『LMNノート』は文字ちっちゃめなので読みにくいかもですが、もしよかったらそちらから続き読んだほうが早いかもしれません♪
 ヤマケンさん、こんなに長い小説、ここまで読んでくれて本当にありがとう~!!e-266
 これからもどうぞよろしくです(^^)
【2008/09/18 03:54】
| URL | 村上 まゆみ #VWFaYlLU[ 編集] |
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