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探偵L・ロサンジェルス編~墜ちた天使たち~(6)
   探偵L・ロサンジェルス編~墜ちた天使たち~(6)

 ロサンゼルスの十月は暖かい――いや、暑いといってもいいくらいだろうと思いながら、メロはつい先日銃乱射事件があったというビバリーヒルズ高のキャンパスを歩いていた。
 事件が起きてまだ一週間も経っておらず、校門の鉄製門扉の前には、いまだマスコミが連日押しかけるような状態が続いている……十二名の生徒が亡くなった教室や講堂や実習室などには、いわゆる<関係者以外立入禁止(Keep out)>と書かれた黄色いテープが張り巡らされ、授業が再開されるのは明日以降のことだとメロは聞いていた。ちなみにメロは高校の十二年生として、この十月に編入してきたばかりという設定で、前はイギリスのイートン高にいたということになっている……誰かに何か事情を聞かれたとすれば、「親の都合で」とでも、無表情に答えておけばいいだけの話だった。
(そんなくだらないことはどうでもいいとして)と、メロはチョコレートを齧りながら、校内を歩きまわりつつ思う。彼は今、革素材の服を着用していたが、上はノースリーブだというのに、それでもまだ暑かった。廊下を歩く途中で、大きな寒暖計があるのを見て――それは化学室のある並びの廊下だった――(二十六度か。なるほどな……)と妙に彼は納得する。実際に学校がはじまったら、もう少し薄着でもいいくらいかもしれないと、メロはそう思った。
 そして、十二人の生徒が死亡したとされる場所を一通り見てまわったあと、(今日はこんなところでいいか)と、メロがチョコレートをパキッと食べていた時――人の気配がした。カッカッ、とチョークの先が黒板を叩くような音が聞こえ、メロは<第Ⅰ化学室>と書かれた実験室を、後ろのドアから覗きこむ。
 そこでは、赤褐色の長い髪の少女が、黒板に向かってある数式を解いているところで、メロは暫くの間黙って、彼女がその数式を解くのを見守っていた。事件について、もしかしたら何か知っているかもしれないし、またもし詳しいことは知らなくても、学校内部にいる人間にしかわからない校内の空気についてや、プラスになることを何か聞ける可能性があった。それで、暫くの間開けっ放しになっているドアに寄りかかって、メロは彼女の後ろ姿と、新しく書き込まれる数式とをじっと見つめていたのだった。
「……だれ?」
 黒板がアルファベットや数字でいっぱいになった頃、ようやく彼女はメロの存在に気づいて振り返る。
「あんた、頭いいんだな。ポアンカレ予想なんて、高校じゃ習ったりしないだろ?」
「ふーん。それがわかっただけでも、あなたも結構キレ者ね。実は今、グレゴリー・ペレルマンの論文に夢中になってるの」
 黒板消しでチョークの文字や数字をすべて消しながら、彼女はそう言った。グレゴリー・ペレルマンとは、百年に渡り未解決であったポアンカレ予想を解いたとして知られる、数学者の世界では非常に有名な人物だった。
「俺もこの式には一時期、少しの間ハマってたんだ。だが、ペレルマンの論文には確かに驚かされたと言っていい……俺もこの問題はてっきり、トポロジーを使って解かれるものだとばかり思っていたが、ペレルマンは微分幾何学と物理学の手法を使って解いたんだよな」
「それであたしも、その証明が正しいものかどうかって今やってみたんだけど……途中でよくわかんなくなってきちゃって。家に帰ってまた、彼の論文をもう一度検証してみることにするわ」
 もうひとつあった黒板消しで、メロは黒板の文字や数字を消すのを手伝いながら感嘆する。確かに途中まで、彼女の証明の仕方は間違いなく合っていた。まだ高校生であるにも関わらず、ここまでのことが出来る人間がいるとは……(世界ってのは広いもんだな)と、彼にしては珍しくそんなふうに感じる。
「あんた、家に帰るんなら、送っていってやろうか?」
 メロが何気なくそう聞くと、少女は軽く肩を竦めている。まるで、そうした誘いが多くて、普段から辟易しているといったような顔つきだった。
「悪いけど、結構よ。それにうちはここから凄く近いし、わざわざ送ってもらうまでもないわ……まさかとは思うけど、そのためだけにわたしのことを待ってたんじゃないわよね?」
「まさか」と、メロは笑いたくなる。「俺は今学期からの編入生でね、今日はちょっと学校の下見に来たってだけだ。そしたらあんたが偶然、おそろしい勢いで黒板に数字や文字を書きつけてたんで、ちょっとばかり驚いて立ち止まったっていうそれだけだ」
「そうなの……」窓から差す西日のせいか、少女の顔は微かに赤くなっているようだった。あるいは自惚れていたみたいで恥かしいと思ったのかもしれない。
「あたし、アリス・リード」
 少女はメロに向かって握手を求めながら言った。
「俺はミハエル・ケール……前にいた学校ではメロって呼ばれてた。あんたの名前は不思議の国のアリスってところか?」
「そうね。父がルイス・キャロルの大ファンで、この名前をつけてくれたらしいわ」
 メロが彼女と昇降口まで一緒に歩いていったのは、それなりに理由があってのことだった。第一に、流れとしてそれが自然であったこと、第二に、先日あった銃乱射事件について、彼女から何か聞けるかもしれないと思ったことがある……だが、アリスの口から「実はあたしも先月転校してきたばかりなのよ」という言葉を聞くなり、メロは態度に出さないまでも、顔の表情を一瞬変えた。
「本当に、送っていかなくていいのか?」
 学校の駐車場でハーレーに乗りながら、メロはあらためて彼女にそう聞く。黒のヘルメットを被り、エンジンをかけるメロに、ケイトは教科書やノートを胸に抱いたまま、手を振っている。
「いいのよ。本当に、家はここから近いから……」
 じゃあまた学校で、と、生徒同士がよく交わす挨拶をしてから、メロはビバリーヒルズの丘陵にある高級コンドミニアムまで、バイクを走らせていった。
(まさか、こんなに早く本物の超能力者とやらに行きあたるとはな)――その偶然に驚きながら、メロは少し遠出をしてからワタリ所有のコンドミニアムへ戻ることにした。
 稜線沿いにバイクを走らせ、ロサンゼルスの美しい景色を眺めたあと、メロが無事帰宅すると、ニアから直接Deneuveの名前でメールが届いていることに気づく。
 チッ、と舌打ちしたくなるのを堪えて、メロはその手紙を開封した。

<わたしとリドナーとジェバンニは、今ビバリーヒルズホテルに宿泊していますが、明日にはあなたの在籍している高校の近くへ引っ越す予定でいます……似たような家の立ち並ぶ、中産階級の庶民が暮らす通りらしいですが、あなたにワタリの高級別荘を先に押さえられた以上は仕方のないことです。もしメロがわたしとリドナーとジェバンニをその別荘へ招待してくれるというなら話は別ですが、それは望み薄というものでしょうね……どうぞ、高級コンドミニアムをメロひとりで占領・満喫してください。

                              かしこ

 P.S.メロが嫌でもまた連絡します>

(まったく、メールにまで性格の悪さが滲みでてるな)
 そう思いながらメロは、ニアからの手紙を即刻ゴミ箱へ捨てる。ようするに、高校へ直接通う自分がその家で暮らすことにし、ニアとその部下にコンドミニアムを譲れと言いたいのだろう。
(誰がおまえなんかに譲るかっての)
 メロは冷蔵庫からチョコレートを一枚取り出すと、それをパキッと齧った。冷えていてとてもうまい――メロは寝椅子の上にごろりと横になってチョコを食べ終えると、ジャグジー付きの浴室でシャワーでも浴びることにしようと思った。
 このコンドミニアムには、ゲストルームが七つもあったから、メロにニア、それに彼のふたりの部下がここで暮らそうと思って暮らせないことはない。だがメロは部屋をニアに譲るよう、Lに直接言われでもしない限り――絶対にここから出ていくつもりはなかった。
(中産階級の庶民が暮らす家でも十分贅沢じゃねーか。なんにしても、Lとラケルがこの家へ来た時のために、俺はニアにここを譲る気はまったくない)
 恥かしくなるくらい広い浴室でメロはシャワーを浴びると、髪の毛をタオルで拭きながらリビングまでペタペタ歩いていった。1万㎡近くある敷地内に建つこの建物は、ゲストルームが七つある他に、ハイビジョンの巨大スクリーンで映画が楽しめる娯楽室がひとつ、さらに地下には電磁波を遮断できる設備まで備えたモニタールームが完備されている。他に広いリビングや食堂やキッチン、さらに書斎や小型の図書館まであることを思えば――メロひとりで暮らすには本当に勿体ないくらいだった。窓からは夜景の輝くロサンゼルスの街並みが見えたし、リビングを囲む大きな窓辺には、くつろぎやすいアームチェアや革張りのソファ、寝椅子などが配され、中央にはカウンターや飾り暖炉が置かれている……メロはそのうちのひとつ、リクライニングチェアへ横になると、居間のTVをつけた。黒のランニングシャツに同色のジーンズという格好で、足を組みながらリモコンを操作する。
 TVの画面では、彼が先ほど視察してきた学校の校門前、そこでPTAらしい婦人がひとり、取り囲む報道陣に向かって泣きながら食ってかかっているところだった。
『あなたたち、それでも人間なの!?まるで人の悲しみを食いものにするモンスターみたいに、いつまでもここに張りついて……いいかげん恥ってものを知ったらどう!?』
 彼女はカメラマンのひとりからカメラを奪い、それを煉瓦塀に叩きつけるが、無情にもその様子をまた、別の局のカメラマンが容赦なく撮影している。そしてその<真実の瞬間>の映像が今、ここで放映されているというわけだった。
「いいかげん、放っておいてやればいいものを……」
 メロは冷えたチョコレート・ドリンクをごくごく飲み干しながら、思わずそう呟いた。他のTV番組にチャンネルを変えても、どこも『ビバリーヒルズ校、銃乱射事件のその後』といった報道が多い。いや、他にもニュースはあることにはあったが、マフィア同士の抗争による撃ち合いだの、レイプ殺人だの、未来に明るい希望が持てるようなものは何ひとつない。
 ケーブルテレビでは、女が男の上に跨ってたり、金欲しさのために仲間を裏切った男が麻薬ディーラーの頭を撃ち抜いてたり、あるいは血も凍るようなホラー映画が放映になったりしている。メロは夜な夜な女を攫ってきては、儀式めいたやり方で殺害していくその場面を見て、思わず身を起こした。
 何も、ホラー映画に特に興味があるというわけではない。ただ、今回銃乱射事件を起こした生徒ふたりが、悪魔崇拝者(サタニスト)だったことから、関連する何かがそこから読み取れはしないかと考えたためだった。ふたりは『闇の髑髏結社(ダーク・スカルズ)』のメンバーで、毎週末の金曜日、悪魔を召喚するための儀式を行っていたという。各メディアでは<悪魔に取り憑かれての犯行>と分析する向きが多かったが、それと同時に犯人の生徒ふたりの複雑な家庭事情も明るみに出た結果、今回の一連の事件がさらに熱を帯びることとなったわけだ。ひとり目の犯人はミッチェル・ロビンスと言い、ハリウッドで子役時代から有名なマーティン・ロビンスを兄に持っているということだった。ふたりの年齢は一つ違いだが、ショー・ビジネスに首ったけの母親はミッチェルのことをほとんど放ったらかしにして、兄のマーティンばかりを気にかけていたという(ちなみに父親は某大物プロデューサーだが、ミッチェルが小さな時に離婚している)。そしてふたり目、ラッセル・フリーマンはロサンゼルスで不動産王として有名な男を父親に持っているらしいが、こちらは義理の母親が五秒おきに入れ替わるといったような按配だったという(五秒おきと言うのは、息子のラッセル本人の話によれば、ということだが)。
 つまり、ふたりとも金持ちのボンボンといっていい高貴な生まれだったわけだが、本物の愛情を金に換算したものを与えられて育ったという共通点があったということだ。ロビンスもフリーマンもBMWやコルベットといった高級車で登校してくる以外は、とても大人しくて目立たない生徒だったと、教師も同級生も語っている……そしてそんなふたりには、もうひとつの恐ろしい顔があった。<ダーク・スカルズ>というオカルト・クラブを結成し、そこで彼らは常にリーダーとして行動していたという。真夜中に小学校の廃屋跡地で五芒星を描き、その上で黒猫を殺す、それが<ダーク・スカルズ>へ入信するための儀式だったと元メンバーの生徒たちは語っている。
 そんな暗い集まりに一体どれほどの生徒が集まるのか不思議に思う大人は多いに違いないが、意外にも会のメンバーは百名近くもいたらしい。今回の事件によって初めて、自分の息子や娘が<ダーク・スカルズ>のメンバー、あるいは元メンバーであったことを知り、ショックを受けた親は多いという。メンバーの掟の中に、髑髏模様のアクセサリーを肌身離さず身に着けるという項目があり、もしやと思い自分の子供の部屋を調べたら、恐ろしいような言葉の並んだ『悪魔の交換日記』がそこからは出てきたというわけだ。
<ダーク・スカルズ>のメンバーは、会の中でひとりソウルメイトを選びだし、その人間と交換日記を行うことになっている。日記の中には親を殺してやりたいと思っていること、吸血鬼になるためにはどうしたらいいか、ゾンビを墓から甦らせるには……などなど、普通の親であれば卒倒したくなるような言葉が並んでいたらしい。実際に親に黒魔術をかけたら、突然腹が痛いと言いだし、午後いっぱい寝こんでいたということや、そうした実証例を金曜日の定例儀式の会で<ダーク・スカルズ>のメンバーたちは話し合うというわけだ。
 そしてある時、みんなで五芒星を囲んで降霊術を行っていたところ、悪魔からのこんな言葉が霊媒体質の生徒を通して語られたという。『10月の13日に、学校の生徒十三人を生贄として捧げよ』……と。その場にいた会のメンバーたちは全員総毛立ち、間違いなくその時悪霊のような何かが存在していたと口を揃えて証言している。それに対してTVのゲストコメンテーターは「集団ヒステリーでしょうな」と論証したが、元メンバーの生徒には実際怖くなって次の日に教会で清めの儀式を行った者もいるという、そんな話もある。
(まったく、馬鹿らしいな)
 さるぐつわを噛まされたブルネットの女性が、「お願いだから、殺さないで!」と目を剥いて必死に訴えかけるシーンで、メロはやはりチャンネルを変えた。その画像はおそらく、ハリウッドにある某スタジオで撮影されたもので、すぐに「ハーイ!カット!」と助監督か誰かが声をかけているに違いなかったからだ。だが人は偽りと知りながらも、その映像の魔術の虜になって感情移入したりする。
 ロビンスとフリーマンの部屋からは、大量のオカルト系の雑誌やDVD、ゲームソフトなどが発見され、その影響が彼らにどんな精神的役割を果たしたかということが、TVのワイドショーでは連日検証されているらしいが――メロにしてみれば、そうしたことはすべて馬鹿らしいことだった。
 彼らはおそらく、既成の価値観や伝統的なキリスト教保守主義といったもの、さらには親に反抗したかったという、それだけのことに過ぎないというのが、メロ自身の推論だった。つまり方向性は違うが、一昔前なら髪をリーゼントにして革のジャケットを着、悪い仲間とつるんでコカインをやったり退廃的な女と寝たりというのが、<非行>の王道だったかもしれない。だが、世の中が複雑になる過程で、「普通のいい子」がそれこそ<普通に>非行に走った結果のひとつの形態と見なしたほうがいいだろうと、メロはそう思っていた。<L>には、通信機越しに自分はそう分析していると言ったら、「興味深い意見ですね」などと面白がられてしまったが……。
 メロはその夜、眠る前に地下の通信室でLと軽く業務連絡を取りあった。メールでも済むような話ではあったが、なんとなく彼と少し話がしたくなったせいだった。そして今日学校で見聞きしたこと、また「アリス・リード」というポアンカレ予想の検証をしていた生徒が超能力者ではないかと思うことをLに話した。
『なるほど……ポアンカレ予想とは尋常ではありませんね。彼女は経歴によるとポアンカレ予想を解いたと言われるペレルマンと同じく、十六歳で国際数学オリンピックに出場し、金メダルを取っているそうですが――相当に才能豊かな女性のようですね』
「だからこそ、怪しいんだろ」と、パキッとチョコレートを食べながらメロは言う。「カイ・ハザードに異常なくらいチェスの才能があったみたいに、元自閉症児の超能力者には何かの分野に関して飛び抜けた才能があるらしいからな……とにかく俺は「アリス・リード」って女と例のマトリックス野郎をこれから張ることにする。他に、近頃転校してきた生徒を全員チェックするのも大事かもしれないな」
『マトリックスですか。もしかしてそれは例の……?』
「ああ。例の一件以来、奴はそう呼ばれてるらしいぜ。銃乱射事件の犯人が発砲した弾はことごとく、<マトリックス>みたいに奴をよけていったってことでな」
『なるほど。面白いですね……これでもし彼がPKであることが判明し、さらにアリス・リードなる女性の能力も判明したとしたら――例の美術館の絵画すりかえ事件は解決に一歩近づくかもしれません』
「あ~、そのことなんだが、L」と、メロはどこか言いにくそうに言葉を濁している。「今日ニアの奴から連絡があってさ、メールの文面を読むにどうも、このコンドミニアムを譲れって言ってるような気がするんだよな……まあ、向こうはニアの子守りにふたり部下がいるわけだから、ここを基地として使いたい気持ちはわかる。だが、俺はあいつと一緒に暮らすと考えただけでも虫唾が走るし、それならどこか別のところに部屋でも借りようかと思ってさ……」
『そんなことは気にしなくていいですよ、メロ』Lがよもやスクリーンの向こうで笑いそうになっているとは、メロは思いもしない。『それに、わたしもロンドンでの事件が解決次第、あなたたちと合流する予定ですから、そのコンドミニアムはメロひとりで占領していてください。ニアが住む高校近くの物件も、そんなに悪くはないはずですよ……パステルカラーの似たような一軒家の立ち並ぶ、庭にパームツリーが生えた素敵な住宅です。その通りには、メロが先ほどいったアリス・リード、彼女も住んでいることですし、言ってみればこれも仕事の一部ということです』
「っていうことは、Lは最初からそのこと知ってたのか」
 せっかく手柄を取ったと思ったのに、そう思いながらメロは、二枚目の板チョコレートの銀紙を剥がす。
『ビバリーヒルズ高校の在校生徒のデータをワタリにハッキングしてもらったんですよ。ちょうどその資料に目を通してメロに送ろうと思ってたら、あなたから連絡が来たものですから……』
「そっか。じゃあ、早速その資料、こっちにも送ってくれ」
 最後にメロは、ラケルが元気かどうか、今何してるかと聞いてから、Lとの通信を終えた。彼女は今眠っているが、とても元気だという話だった。ロンドンとロスの時差は約三時間ほど――今が深夜の二時であることを思えば、彼女はまだ眠っていてなんらおかしくはない時刻だった。
(っていうか、Lまたほとんど徹夜じゃんか)
 まったく、一体いつ眠っているのやらと思いつつ、メロは欠伸とともに伸びをする。明日から学校で授業があるので、そろそろ寝なければならないと、彼は思う。そして最後にLが送ってくれたビバヒル校在校生の個人データを受け取り、その中の転校生を何人かチェックした。
(もしかしたら偽名なのかもしれんが、結構バレバレだな)
 もっとも、相手が本当に超能力者かどうか、それとも本当にただの転校生なのかには、見極めが必要なことではある。それでもこれだけマークすればいい人間が絞られているなら――相手に揺さぶりをかけるのは、そう難しいことではないかもしれなかった。何しろ相手は<マトリックス>なのだから、もしかしたら自分の能力をひけらかしたい気持ちを持っているかも知れないではないか。
(ま、なんにしても明日のことは明日考えるさ)
 そう思いながらメロは、馬鹿でかい主寝室のダブルベッドで眠りに落ちていった。あまりにベッドが広いせいで、思わずラスティスのことが脳裏をよぎる……メロはあのあと<殺し屋ギルド>のフランス・パリ支部まで彼女のことを尾けていたが、ロスに超能力者たちが集められるという情報を得、すぐにアメリカへ飛んできたというわけだ。
 どのみち、アリス・リードやマトリックス野郎を追う過程で、ラスティスとはまた会うことになるだろう――メロはそう判断していた。Lにはまだラスと寝たことは伏せていたが、彼にしてみればラスの体の火傷の痕が何故こんなにも気にかかるのか、その謎が解けないことには……Lにもまだそのことを話す気には、とてもなれなかったのだった。



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【2008/09/17 01:03 】
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