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探偵L・ロサンジェルス編~墜ちた天使たち~(5)
   探偵L・ロサンジェルス編~墜ちた天使たち~(5)

 ドイツのフランクフルトにある、欧州中央銀行へは、ジェバンニとリドナーが無事ユーロ紙幣の原版を返しにいった。自殺した初代総裁のウィレム・ダウゼンベルヒの次に総裁として名前が挙がっていた、ジャン=クロード・ノワイユが新総裁として着任していたわけだが――彼にはひとつの黒い噂があった。そしてそのことにより、ニアもLも彼のことをまったく信用していなかったわけだが、ノワイユ自身はドヌーヴの探偵としての腕を非常に高く買っていたと言われている。
 ゆえに、ジェバンニもリドナーも彼が下にも置かぬ対応で色々もてなしてくれるのは有難い反面、多少面倒だと感じないこともなかった。業務報告がてら話をしているとどうも、ノワイユはジェバンニのことをドヌーヴだと勘違いしている節があり(一応最初に、彼はドヌーヴの部下に過ぎないという説明はしてあったのだが)、リドナーはその秘書といった立場であるように、ノワイユは勝手に解釈したようだった。
「どうも、あやしい感じですね」
 オカルト探偵、ロジェ・ドヌーヴが本拠としているパリまで戻ってくると、ジェバンニはニアにそう報告した。メキシコからそのままドイツへ向かったわけではなく、三人はワタリとともに一度、フランスへ戻ってきていた――何より、ニアが二人とともにメキシコへ向かったのは、一刻も早くユーロ紙幣の原版が本物であるかどうかを確かめたかったからに他ならない。ゆえに、その確認が済んだ以上は、ドイツまでわざわざ自分が足を向ける必要はないと判断していたのである。
「一体どのへんが怪しいんですか?」と、線路のジオラマを作成しながら、ニアは言った。トンネルが通る山を発泡スチロールで作り、そこに緑色のスプレーで着色していく……さらに本物そっくりの樹木を一本一本植樹していくのは、なんとも気が遠くなる作業であるようにしか見えない。
「いえ、その……確かに我々は歓待されましたし、ノワイユ総裁はドヌーヴに絶大の信頼を置いているような口振りでした。フランスのシラク大統領が、エリゼ宮にドヌーヴを招待して、一度話をしてみたいと言っていたとも聞きましたし……」
「馬鹿らしいことですね」ニアはのどかな田舎の野山にレールを敷設しながら言う。「探偵というのは、面が割れてしまえばおしまいです。何しろ、今はシャーロック・ホームズが生きていた古き良き時代とは違うんですから……シラク大統領にしても、自分のちょっとした好奇心を満たしたくて、ドヌーヴに会いたいに過ぎないんですよ。まあ、そんなくだらないことはどうでもいいですが、ノワイユの腹が黒いことなど、わたしやLはとっくに看破していることです。わたしとLは最初、カイ・ハザードがダウゼンベルヒのことを操って殺したのは、原版を盗むために指紋や網膜照合、さらに電子ロックのパスワードが必要だったからと考えました。ですが、どうもそれでは話の辻褄が合わないと思ってはいたんです……推理というのは、仮説と修正の繰り返しみたいなものですが、わたしはヴェネチアでカイ・ハザード本人に会って確信しました。彼は人殺しについては、おそらく嫌々ながらやっていたのでしょうね。ダウゼンベルヒが死に、新総裁の候補として名前が挙がっていたのが、ノワイユの他にもうひとりいました。オランダ銀行総裁のアルノート・ファン・ニステルローイです。彼は初代総裁のダウゼンベルヒと以前からこう約束していたそうですよ……自分の次は必ずニステルローイを総裁にすると。ですがニステルローイは、スイスのルツェルンにある別荘で溺死しています。時期が時期だったということもあり、当然陰謀説が囁かれましたが、検死の結果はプールで心臓麻痺を起こしたことによる溺死と判断されました……このことを、どう思います?」
「どうって、言われても……」と、ジェバンニはちょっとの間口ごもる。ちらとリドナーに視線を向けるが、彼女は今パソコンに向かい、探偵のドヌーヴ宛てにきたメールをまとめている最中だった。
「その、こうは考えられないでしょうか?カイ・ハザードがダウゼンベルヒ同様、ニステルローイのことも殺したんです。相手に強い暗示をかけられるなら……プールで溺れて死なせるなんて、簡単なことですよ」
「そうですね。わたしもその点については考えました。確かにその可能性はゼロではないにしても……彼と似た力を持つ人間がもうひとりいるとカイ・ハザードに聞いて、ちょっと推理し直すことにしたんです。ニステルローイはスイスの別荘でひとりの婦人と若い娘に会っていたそうですからね。ただし、名前や素性がまったくわからない。マスコミ向けとしては、ニステルローイはそこで、一足先に家族が来るのを待っていたということになってはいます。しかし、わたしやLが調べても相手の女性の名前がわからないというのは……これは余程のことです。そこで、Lにカイ・ハザードから得た情報を元にこう報告しました。おそらく若い娘の名前はカミーユ・ヴェルディーユ、そして婦人のほうは母親のソニアだったのではないかと。カミーユが超能力を使ってニステルローイを溺れさせ、結果として彼は心臓麻痺により死亡した、こう考えれば話の辻褄は合います」
「なるほど。流石はニアですね!」
 ふむふむと、いかにも考え深げに、ジェバンニは何度も頷いている。そんな彼に対してニアは、「……………」と思うのみだった。ジェバンニはオカルトに造詣が深いだけあって、こうした話について「そんな馬鹿な!」といった反論をすることは少ない。だが、リドナーのように時々反対意見を言われたほうが、ニアは不思議と納得のいくものを感じる。
「ニア、我々の留守中に届いたメール及び、<表>のサイトの書きこみなど、情報分析終了しました」
「どうせまた、くだらない書きこみやメールばかりだったんでしょうね」と、ニアは溜息を着く。「UFOを見かけたとか、あるいは超常現象についてとか……どこかで聞いたような話を繰り返されるのはたくさんですから、その報告書の分析はジェバンニに回してください。中でこれだけは信憑性がありそうだっていうものだけ、わたしにファイルとして渡してくれれば、あとは<L>にそれを送っておきます」
「わかりました、ニア」と、リドナーは答えて、報告書としてまとめたものを印刷している。最初のこうした<絞りこみ>は彼女が行わないと――ジェバンニは愚にもつかない情報を時々鵜呑みにしてしまうことがあるのだ。そんなわけで、リドナーは溜息を着きながら印刷の終わったものをファイルし、ジェバンニに渡した。
「ところでニア、今の話を聞いていて思ったんですが、つまりヴェルディーユ博士……いえ、<殺し屋ギルド>にとってニステルローイは邪魔な存在だったということですね?<殺し屋ギルド>にとっては、自分たちがより扱いやすいノワイユに欧州銀行の総裁に就いてほしかった……そう考えればダウゼンベルヒが何故死んだのかがわかります。単に指紋や網膜照合、電子ロックのパスワードといった情報が欲しいだけなら、殺す必要まではない。何故なら、カイ・ハザードには人を深い催眠状態に陥れる能力があるわけですから、彼にすべてを話すよう仕向け、指紋や網膜照合といった必要なデータを取得後、すべてを忘れるよう再び暗示をかければいいだけの話だからです。わたしの言ってること、間違ってるでしょうか?」
「いいえ、リドナーはいつも話が早くて助かります」
(もうひとりのオカルトマニアとは違って)という言葉を、ニアはとりあえず飲みこんでおく。ジェバンニはリドナーからファイルを渡されるなり、「おお!」とか「これは……!」とひとりでブツブツ呟いてばかりいる。そんな彼のことは一切無視して、ニアはリドナーと話を続けた。
「ここからはわたしの推測の域を出ないことも多少混じりますが、カイ・ハザードは彼の尊敬するファーター……エッカート博士やその片腕のソニア・ヴェルディーユの父親を亡くして以来、自分の所属する超能力施設や<殺し屋ギルド>のやり方といったものに疑問を持ったんでしょうね。そんな彼の元にノワイユを殺すよう命令が下り、カイ・ハザードは一計を案じた……裏の世界で色々な仕事をさせられた彼は、<L>やドヌーヴといった探偵の噂については前から知っていたのでしょう。ソニア・ヴェルディーユが娘のカミーユの延命のことしか考えていないとすれば、これから超能力を持つ子供たちが人工的に次々と誕生させられ、影の組織で実験台とされることは目に見えています。カイ・ハザードは超能力を所有する今の施設の子供たちと、次世代の超能力者たちのことを守りたかった……そこで、ダウゼンベルヒ殺害の命令の裏をかいてむしろそのことを利用した、そう考えるのが可能性として一番高いことです」
「なるほど。これで色々なことの辻褄が合うとわたしも思います。原版を盗んだ時のあのやり口は、超能力を使ったとしか言いようがないという部分が確かにありました。そして、まだいくつか解明されない疑問点も残されています。ニアの話では、カイ・ハザードは他の能力者たちがどういった種類の超能力を持っているかは教えなかったということですよね?ですが、あの犯行のやり口から見て、ある程度それがどういった力によるものなのか、推測できるようにも思います」
「そうですね」と、ニアは軽く溜息を洩らす。ジオラマ作りに飽きた、というわけではない。超能力など、実際にこの目で見るまでは信じるまいとこれまで思ってきただけに――自分の話す言葉がやけに現実離れして感じられるせいだった。「まず、監視カメラがめちゃくちゃに潰されていたことから、能力者のひとりに念動力、PK(サイコキネシス)の力を持つ者がいると見ていいでしょう。あとは電磁波を操れる人間、さらにはテレポーターがいるかもしれません……わたしの超能力に乏しい知識でわかるのは、そんなところでしょうか」
「ニアの意見に同意します。それならば色々なことの辻褄が合いますから……もともと、カイ・ハザードには指紋や網膜照合、電子ロックのパスワードといったものは必要がなかった可能性さえあります。ただ、そうなるとまた新たに疑問な点が浮かんできますね。瞬間移動できる能力者がいれば、その者ひとりだけでも十分可能な犯行だったとも言えるからです。むしろ、カイ・ハザードが欲しかったのは赤外線探知機など、セキュリティ・システムについてや、原版のある金庫室の見取り図といったものだったのではないでしょうか?」
「流石はリドナー、鋭いですね」ニアは敷設したレールにSLを走らせながら言った。機関車はホームを出発すると、紅葉した野山のトンネルを抜け、のどかな農家の傍らを通りすぎてゆく……彼はジオラマにさらなるドラマ性を与えるために、今度は農場に柵囲いを作って、そこに牛や馬を配することにした。「カイ・ハザードは自分のことを、生まれながらの段取り魔だと言っていました。そして、物事にはなんでも万が一ということがあると……つまり、彼はユーロ紙幣の原版を盗むなどという大罪を犯す以上は――また、そのことに大切な仲間の能力者たちを巻きこむ以上は、相当念入りにこの計画を立てたものと思われます。テレポートの能力を持つ人間が建物内に入りこんだ場合、不用意にセキュリティ・システムに触ってしまう可能性がありますから、まずそのシステムをダウンさせるために電磁波を操る能力者、あるいはサイコメトラーといった能力の保持者がいると考えられるでしょうね。あとは監視カメラのある場所を事前にチェックしておいて、PKを持つ能力者にそれをすべて破壊させる……いいですか?彼らはこのおそるべき犯行を行うのに、五分とかかっていないんです。そして、あなたたちふたりがドイツへ行っている間に、<L>からまた新たな依頼がありました」
 これです、と言って、ニアは百以上あるモニターのひとつ――中央の一際大きい画面に、あるひとつの映像を映しだす。
「これは……!」と、思わず息を飲んだのは、リドナーだけではなく、ジェバンニも同様だった。一応彼もまた、オカルト・ファイルに目を通しつつ、ふたりの話を聞いていたのである。
「すみません、ニア。今のもう一回お願いできませんか?」
 もっとよく見たい、というようにジェバンニはスクリーンの近くまで椅子を運んでいる。確かにオカルトマニアにはたまらない映像だろうと、ニアはそう思いながら、テープを巻き戻す。
「この映像が捉えられたのは、ルーヴル美術館内でのことです。ほんの瞬きするかしないかの間に、白い幽霊のような人影が映って、そして消えています……時間は深夜の二時過ぎということを思えば、いっそのこと幽霊の衝撃映像ということにでもしたいくらいですが、おそらくこれがテレポーターの正体ではないかと、<L>はそう思ったみたいですね」
「つまり、どういうことですか?」と、リドナーがニアに話の先を促す。
「美術館へ行くと、時々監視カメラと目が合うでしょう?ですが、それらの多くのものはフェイクである場合が多いんですよ。実際のところ、数多くの監視カメラの映像をチェックするのは、コストがかかり過ぎますからね……大抵の監視カメラは心理的な威圧のために美術館では仕掛けられていることが多いんです。大体、真っ昼間から絵をすりかえて盗むだなんて、捕まる可能性があまりに高すぎますから、そんな大胆な犯行を行う者はいないでしょうし……そんなわけで、夜間も美術館の警備は絵画などを動かそうとしたらアラームが鳴る、その瞬間にその区画の出口を塞ぐべく柵が下りてくるといった囲いこみを行っている場合が多いんです。これは偶然運良くというべきか――おそらく、位置からしてテレポーター本人は監視カメラの位置に気づかなかったんでしょうね。たまたま映像として保管することの出来た、非常に貴重な証拠品です」
「このことからも、超能力者について、新たな推測が生まれますね」と、ジェバンニが何故か嬉しそうに言う。「ルーヴル美術館はとても広い……その中で彼女が何を盗んだのかまではわかりませんが、一度に<飛べる>力にはおそらく限界があるんですよ。館内で何かを盗み、無事安全な場所まで一息に飛べるほどの力はおそらくないんでしょう。絵か何かを盗んで、一度瞬間移動し、この監視カメラの映像が捉えた地点で一瞬姿を現し、それから外へ出た……そう考えるのが自然だと思います」
「なるほど。あなたにしてはなかなか鋭い推理です。ところで、よく『彼女』が絵を盗んだとわかりましたね?」
「だって、白っぽいフードを被った装束を着てるみたいですけど、どう見たってこの後ろ姿は女性っぽいですよ。ただ、大きな絵を手にしてるとしたら、体からはみでるでしょうから……そう考えると、盗んだのはわりと小さめの絵だったんじゃないでしょうか?それとも、これは絵を盗む前の映像だったとも考えられますが」
「そのとおりです」こういう時だけジェバンニの推理が冴えるのは何故だろうと思いつつ、ニアは無表情のまま答える。「さっきも言ったとおり、ルーヴルでは絵画を外そうとすると警報が鳴って柵囲いが下りてきます。そして警備員が駆けつけるまでの時間が約十五分ほどですか……何分、広いですからね、ルーヴルは。相手がテレポーターなら、そんな柵囲いは意味ないですから、当然警備員が駆けつけた時、そこには誰もいなかったんです。そして何かが盗まれた形跡もなかったために――警報の誤作動ではないかと、美術館の警備員は館長に報告したようです。しかし、なんとなく不審に思ったファリエール館長は、その区間を一時的に閉鎖して調べることにしたというわけですね。そしてわかったのが……フェルメールの『レースを編む女』という絵が本物そっくりの贋作にすりかえられていたということでした」
「えーっ!!それって世紀の大事件じゃないですか!!」
 白い幽霊のような映像が映ったその瞬間で画面を停め、ジェバンニはそう叫ぶ。ズームであちこち引き伸ばして見るが、彼女が何か大きな物を手にしているとは思えない。フェルメールの『レースを編む女』なら、彼も一度ルーヴル美術館で本物を見たことがある……確か、縦24cm、横21cmくらいのそんなに大きくはない絵だった。
「時間的には、この人物が監視カメラの映像に映ったのは絵を盗んだ犯行後のことです。何しろ、ほんの一瞬映ったか映らないかくらいのことですからね……警備室の人間が見落としても、まったく無理のない話ですよ。実をいうとこの手の事件が数か月前から世界各地の美術館で起きていて、ニューヨークのメトロポリタン美術館ではサージェントの『マダムX(ゴートロー夫人)』が、フィレンツェのウフィツィ美術館ではボッティチェリの『ザクロの聖母』が、パリのオルセー美術館ではミレーの『落穂拾い』が、ロシアのエルミタージュ美術館からはゴッホの『夜の白い家』が盗まれているといった具合ですね……他にもマドリードのプラド美術館やロンドンのナショナル・ギャラリーなどからも絵画が盗まれているようですが、まあやり口は基本的にどこも一緒です。中にはいくら瞬間移動の能力があるとはいえ、ひとりで運ぶには大きすぎるサイズのものがあることを思えば……他にもうひとりテレポーターがいるか、仲間と一緒に瞬間移動を繰り返して盗んだかのいずかでしょうね」
「ですが、それでは今盗まれた絵の代わりはどうなっているんですか?」と、リドナーが彼女らしく分析的な質問をする。「一部の展示室を一時的に閉鎖することは、美術館ではよくあることです。しかしながら、いつまでも隠しておけるようなことではないでしょう?にも関わらず、わたしの記憶する限り、どこの新聞でもニュースでも、世界の大美術館所蔵の絵が盗まれたなんていう話、報道してませんから……まさかとは思いますが……」
「そのまさかですよ」ニアはさもおかしいことを聞いたというように、ニヤリと笑っている。くるくると髪の毛を指で巻き取りながら。「犯人は、絵画を盗む際に必ず本物そっくりの絵を代わりにかけていくんだそうですよ。それこそ、よほど鑑識眼のある美術鑑定家がルーペを使ってじっくり眺めまわさないことには、気づかないほどの素晴らしい贋作をね……こんな面白い事件に、<L>が飛びつかないわけがない。ですが、彼も色々と忙しい身の上ですから、この事件はわたしに譲ってくれるそうです。今はどこの美術館の館長も、いつ贋作であることがバレるかと毎日冷や冷やしながら胃薬と仲良くしてるそうですから、早く本物を取り返して彼らの心の重荷を取り去ってあげること、それが我々の急務というわけです」
「そうは言っても」と、ジェバンニがぽりぽりと黒髪をかきながら言う。「ニアには何か策があるんですか?なんといっても相手は超能力者ですからね、普通に真正面から当たっても我々に勝ち目はありません……具体的にどうするつもりなんですか?」
「幸い、アメリカの美術館からも何作か作品が盗まれてますので、ここはエラルド・コイルことメロと協力することにしました」
「メロと……!?」
 リドナーとジェバンニは顔を見合わせて驚く。ふたりとも、メロとは直接会ったことはない――だが、時々ある事務的な業務連絡というのか、互いの間の情報交換というのか、そうしたものを通しただけでも、自分たちの上司と彼は不倶戴天の敵なのだとわかっていた。ニアからも、彼とは<L>の座を競い合うライバル同士なのだと聞いている。
「ではその場合、事件解決の手柄はニアの手に渡るのか、それともメロの手に渡るのか、わからないということになるのでは……?」
「その点は心配無用ですよ、リドナー」ニアはSLがジオラマを一周して、ホームへ戻ってきたところで停めた。あとは風景のディテールを完成させて、次はタイタニック号の模型でも作ることにしようと彼は思う。
「そもそもこの事件は――というのは、超能力者が絡んだ事件全般において、ということですけどね――わたしとLとメロが協力しない限り、解決が難しいだろうと思うんです。それはメロも一緒でしょう。ですから、渋々といった体ではありましたが、きのう彼から連絡がありましたよ……なんでも、L経由でわたしに伝えるなら伝えろってメロは言ってたそうですが、そういうことなら直接わたしに連絡するようにLが言ったんだそうです。それで、超能力者たちがロサンジェルスにいるらしいことを彼が突きとめたと聞きました」
「では……!!」
 先を越された、という顔をジェバンニとリドナーがしているのを見て、ニアは内心おかしくなる。そんなに焦らなくても――自分たちにはまだ<切り札>があるということを、彼らは忘れているのだろうか?
「まあ、そんなわけで明日、ロサンジェルスへ移動することにしましょう。切符の手配などはすべて、リドナーにお任せします」
「……はい」と、リドナーは答えた後で、ふときのう飛行機の機内で見た新聞の見出しのことを思いだす。
「あの、ニア……もしかしたらまったく関係ないかもしれませんが、ビバリーヒルズの高校で起きた銃の乱射事件、あれは超能力者と何か関係があるんでしょうか?」
「鋭いですね」ニアはタイタニック号を作る模型の材料は、ロスで購入しようと考えながら言った。「あの事件には少し、おかしな点があるんですよ……まず、犯人の生徒ふたりは銃を乱射して無関係の人間十二人を殺害しています。そして十三人目――ルーク・フォスターという十七歳の青年がふたりを止めるために仲介役として説得工作をしたというんです。そしてほどなくして、ふたりは泣きながら警察に投降してきたらしいですよ……その青年が撃たれるところを、何人もの生徒が『見た』と証言しています。ですが、銃弾は<不自然なくらい彼を避けて>いたように見えたと、そう犯人も目撃者も言っているんです。おかしいと思いませんか?」
「なるほど。きっとそいつがPKなんじゃないですか?」とジェバンニが興奮したように口を挟む。「サイコキネシスの能力を使えば、弾道を逸らすことなんて、簡単でしょうから……いえ、僕もそんなこと、漫画かSFの世界にしかありえないって思ってましたけど、超能力っていうものがこれほど現実味を帯びていることを思えば、ありえなくない話じゃないですか」
「そうですね」と、ニアは溜息を着く。「まあ、なんにしても、メロはすでにもうその高校へ生徒として潜入する手続きを取ったそうですから、我々もなるべく早くロスへ向かいましょう」
「はい!!」
 リドナーとジェバンニは、それぞれ分担作業で自分のなすべき仕事を終えると、それぞれの部屋へ戻っていった。ニアは自分のおもちゃ部屋で、お気に入りのロボットを選別すると、ジェバンニにトランクへ入れるよう明日命じるつもりでいた。後のことは――ロサンジェルスへ到着してから考えればいいことだと、そう思いながら、ニアはその夜、天使のような寝顔で眠りに落ちていった。



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【2008/09/17 00:45 】
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コメント
突然のコメント失礼致します。
勝手ながら私どものサイトからこの記事へリンクをさせていただきました。
http://sirube-note.com/guard-member/

もしよろしければ、こちらのページより相互リンク登録もしていただけましたら幸いです。
http://sirube-note.com/guard-member/link/register/
現在のページからのリンクは一定期間の予定ですが、よろしくお願い致します。
(自動書込のため、不適切なコメントとなっていましたら申し訳ございません)
token:4OvKcsTs
【2008/09/17 01:18】
| URL | sirube #mtsVTvCA[ 編集] |
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