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探偵L・ロサンジェルス編~墜ちた天使たち~(2)
   探偵L・ロサンジェルス編~墜ちた天使たち~(2)

「……嘘よ、カイが死んだなんて。マジード、お願いだから冗談はよしてっ!」
 ラスティスが取り乱したような涙声になっているのを聞いて、メロは思わずベッドから身を起こす。ここ約一か月ほどの間、メロは彼女の部屋に仕掛けた盗聴器で電話の内容を聞いていたが――初めて何か、意味のある会話が聞けそうな予感がした。
『知らせるのが遅くなってすまなかった。だが、確かなことがわかるまでは、おまえには何も知らせるなとヴェルディーユ博士に言われていたんだ』
「いつ……それでいつ、カイは死んだの!?」
『十月の初め、つまり探偵のドヌーヴとチェスの勝負をして負けたらしい……いや、勝敗についてははっきりとしたことはわかっていないが、<殺し屋ギルド>のヴェネチア支部の報告では、そういうことになっているな。遺体のほうはドヌーヴ側に渡ったらしい。何しろ、カイには数日で決着をつけるから、絶対に誰も手出ししないでくれと言われていたんだ。それでも、もし万一……』
「もし万一、なに!?」すすり泣く声の隙間から、ラスティスが鋭く叫ぶ。
『もし万一、自分が負けたら、暫くの間はおまえに何も知らせるなと、そう言われていたんだ。だから……知らせるのが遅くなって本当にすまなかった』
 ガチャリ、とそこで突然電話が切れる。当然、盗聴器の存在にラスティスが気づいたためではない。彼女が電話線を引きちぎり、電話機をそのまま壁に叩きつけたためだった。
(おいおい……)と、メロは耳からイヤホンを少し遠ざけながら、顔をしかめる。とりあえず今の衝撃で、電話に仕掛けた小型盗聴器は駄目になったものと思われる。さらに他の部屋の盗聴器からは、凄まじい破壊音――壁に何かをぶつける音、皿や花瓶らしき物が割れる音などが、二十分以上続いた。そしてその間、「カイーっ!!カイー……っ!!」と泣き叫ぶ女の声が、ずっと続いていたのだ。
 正直いってメロは、ラスティスの取り乱しようがあまりに凄まじいものであることに、面食らっていた。この一か月というもの、メロは彼女と<いい友達関係>のようなものを築いており、一緒に美術館へ出かけたり食事をしたりといったことを繰り返していたのだが――メロの知るラスティスは、常に冷静沈着で落ち着いた感じのする女だった。
 自分の恋人の甘い話をするでもなく、ただ必要な時に必要に応じて、必要最低限の言葉のみで会話をする彼女に、メロは好感を持っていたほどだったが、今のこの取り乱しようで、ラスティスがどれほどカイ・ハザードという男を愛していたかがわかる。いや、メロはその種の恋愛感情にまったくと言っていいほど興味はなかったが――自分の好きな男が死んだというだけで、こんなにも泣くことが出来る彼女を、ある意味羨ましくさえ感じた。
 ひっく、ひっくと泣きじゃくるラスティスの声を聴いているうち、メロはなんとはなし、罪悪感に近いものさえ覚える……だがまあ、これも仕事のうちと思うより他はない。明日にでも、何気ないふりを装って彼女の部屋へ花でも届けようとそう思う。
 そして、ここからがメロにとっても極めて重要な任務だった――ラクロス・ラスティスという炎を操る超能力者は今、恋人を失って心に隙間が出来ている。自分はこの一か月の間、いわゆる<良き友にして隣人>をうまく演じ続けてきた……この隙になんとか彼女の心に忍びより、ラスティスを元の組織から引き離すことが出来れば、メロ及びLは相当の情報量を手に入れられるということになるだろう。
 メロはその夜、ロンドンにいる<L>と連絡を取りあい、その方向で動くことを彼に伝えた。この一か月の間にラスティスの電話を盗聴したお陰で、実に色々なことがわかっていたといっていい――たとえば、彼女の他の仲間の名前としてわかっているのが、ボーやルーやティグラン、モーヴやエヴァンジェリカといった名前だった。会話の内容から、ルーやエヴァは女性、他は男性であることが推測されたし、他にも彼らの性格といったものが少しではあるが窺い知ることが出来たといっていい。
『それで、彼らは次にアメリカのロサンジェルスへ行くと言っていたんですね?』
<L>というイタリックの装飾文字を見ながら、メロは頷く。
「ああ。なんでも普通に学校へ通うっていう話だった。一番大事な、どの高校へ通うのかって話までは聞けなかったが、それでもまあ、大体のところ目星をつけるのはそんなに難しくないだろう。それがわかり次第俺も、そちらへ潜入したいと思うんだが……何より、今はラスティスのことがある。彼女とマジードの間の会話を聴いているとどうも、<殺し屋ギルド>っていうのは一枚岩の組織ではないように感じるんだ。ラスもヴェルディーユ博士には不信感を持っているようだし、何より『カイがいなかったら、自分も超能力を世の中のために使おうなんて思わなかった』というような発言を、彼女は何度かしている……つまり、例のカイ・ハザードって男が死んだ今、ラスティスの組織に対する忠誠心は低くなっているとみていいだろう」
『……確かにそれはわかりますが』と、奇妙な間を置いてからLが言う。
『では、メロは恋人を失って弱った女性の心につけいる作戦を取るということで、いいんですか?』
「仕方がないだろう。<殺し屋ギルド>のより詳しい情報を得るためには、この際なりふり構ってなんかいられるか?俺だって出来ればこんなことはしたくないが、そのために一か月もの間、彼女のことを張ってたんだからな……任務として、やるべきことはきっちりやるさ。それがいかに気の進まないことでもな」
『そうですか、わかりました。では、ラスティスに関するすべてのことは今後、メロに一任します』
 メロは<L>との通信を終えると、ひとり寂しく部屋の後片付けをしているらしい、ラスティスの部屋の物音を聞いた――彼自身、自分でも知らないうちに溜息が洩れる。ひとしきり泣いたあとで、彼女の悲しみは怒りに変わったらしく、時々「ロジェ・ドヌーヴなんか殺してやるっ!」と叫ぶラスティスの呟きが聞こえる……そしてそこでふと、メロはこう思った。自分がロジェ・ドヌーヴことニアの情報を彼女に洩らしたとしたらどうだろう?言ってみれば、メロにとってもニアは邪魔な存在なのだ。お互いに気に入らない相手を消そうと持ちかければ、ラスティスを味方につけるのは、そんなに難しいことではないかもしれない……。
 だが、そこまで考えてからメロは、また深い溜息を着く。その時、ちらりとラケルの面影が脳裏をよぎったせいだった。彼女は何を勘違いしているのか知らないが、メロとニアのことを「仲が良いほど喧嘩する兄弟」というように思いこんでいるらしいのだ。メロにとってはまったく迷惑極まりないことではあるが、ニアを自分が殺したとラケルが知ったら――彼女の自分を見る目は明らかに変わってしまうだろう。そう思うと、ニアの頭蓋に銃口を押しつけるのは容易いが、トリガーを引く瞬間に迷いが生じてしまいそうだった。
(では、どうするか……?)
 ここまでくれば消去法として、答えは簡単だった。ようするに、ラスティスのことを騙せばいいのだ。探偵のロジェ・ドヌーヴ=ニアということを知っているのは、世界でもほんの一握りの人間でしかない……そう考えた場合、相手のことを信じこませ、ニアのことを殺したように見せかけるのは、そんなに難しいことではないだろう。
 この案にメロは大いに満足した。何より、最悪の場合はニアのことなどこの世から消し去ってもなんら構わないと思う彼にとっては、ニアが死んだところや自分が殺すところを想像しただけでも、とても楽しい。
 そんなわけでメロは、未必の故意といっていい心理状態で、これからラスティスに接触することに決めた――パキリ、と板チョコレートを楽しげに齧りながら。



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【2008/08/27 18:27 】
探偵L・ロサンジェルス編 | コメント(3) | トラックバック(0)
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コメント
はじめまして、ヤマけんと申します。
すごいですね、僕もニアとかの小説書きたいと思ってたんで、参考にさせていただきます!
【2008/08/29 15:46】
| URL | ヤマケン #-[ 編集] |
 ヤマけんさん、初めまして~!!(^^)
 すごいかどうかはわからないんですけど(笑)、LMNに異常なくらい(?)愛情があるっていうだけですよんe-415
 ヤマけんは性格の歪んだ子ニアが好きなんですか??実はわたし、デスノで一番最初に好きになったキャラ☆がニアなんですよ♪なので、デスノにハマるきっかけを与えてくれたこの子には、本当に感謝してます(^^)
 ヤマけんさんがニアの小説とか書いたら、ぜひ教えてくださいね~!!v-410
 ではでは~!!(^^)/
【2008/08/30 03:27】
| URL | 村上 まゆみ #WZHZREeQ[ 編集] |
では、良いのができましたら・・・
【2008/09/01 12:08】
| URL | ヤマケン #-[ 編集] |
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