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探偵L・イギリス編~ロンドンの爆殺魔~(25)
   探偵L・イギリス編~ロンドンの爆殺魔~(25)

『L、BBCのニュースを見てくれ』
 ラケルが搬送されたという病院へ、今すぐ飛んでいきたいにも関わらず――Lはロバート・カニンガム長官からの連絡で、足止めを食らわされることになった。
「これは……!!」と、Lの口からも思わず、驚きの声が洩れる。
『先ほど、テロの犯人と思しき男から、自白する内容の電話が入ったんだが、電話の声とサミュエル・ビュターンの声紋が一致した。おそらく彼が爆弾作りの主犯と見て、まず間違いないだろう』
「そうですか。警察の手が彼の元に迫っていたというのは、すでにマスコミなどにも流れている情報のようですね。それで捕まるのも時間の問題と思っての自殺……TVの報道を鵜呑みにするとすれば、そういうことになりますか」
『まあ、大体そんなところではないかと、我々も踏んでいる。犯人を捕まえる前に死亡させてしまったのは残念だが……それでもL、あなたがいなければ、ここまで捜査が進むのにもっと時間がかかっていたことだろう。いつもながら、感謝する』
「いえ、それよりも例の件のほうはどうなっていますか?」と、時計を見ながらLは聞く。彼が今、どれほどそわそわしているかというのは、カニンガム長官に推測することはおそらく不可能だったに違いない。
『ジャック・ティンバーレインもほぼ同時刻に逮捕されたよ。最初、奴が警察の捜査に勘付いて、なかなか捕まえられなかったんだが……奥さんが協力してくれてな。ただ、例の自白の電話が警察に入った時、奴はまだ逃亡中だった。それで声の主がティンバーレインなのかビュターンなのかって調査してる間に――ビュターンは仏になっちまったわけだ』
「ええ、とても痛ましいことをしました」
 Lは平板な声で話しながらも、心からそのことを悔やんでいた。当然Lもまた、ビュターンの犯罪歴などのファイルに目を通し、彼が実に気の毒な人間であることを知っていた。あとほんの少し、自分の捜査の手が迅速だったとしたら……もしかしたら彼は、死なずにすんだかもしれないのに。
「すみませんが、わたしは今、他の事件のことで手がいっぱいです。ここまでくれば後はもう、こう言ってはなんですが、事後処理みたいなものですから……あとのことはすべて、カニンガム長官、あなたにお任せします。何かあったら、またワタリに連絡してください。それでは」
 新聞の広告欄で、転送請負業者及びクリスマス・プレゼントの配達人募集の広告を見て以来――Lはあるひとつの仮説に従って動いていた。つまり、クリスマスに誰か怨みのある人間に爆弾をプレゼントするというおそるべき犯罪が行われるのではないか、ということである。
 まず、第一に、エッジウェアロード-パディントン駅間に爆弾を仕掛けた犯人が残した証拠――爆発物やその取扱い説明書がセットになっている箱――のことがある。そのダンボール箱には民間の運送会社の送り状がついてはいたが、調べてみるとその配達伝票は実際には架空のものであることがわかった。つまり、犯人自身、あるいは他の人間が爆弾をセットする部隊の人間にそれを直接届けたということだ。地下鉄テロで最後に捕まった犯人は、呼び鈴が鳴り、家の表に出たらその箱が置いてあったと証言しているが、おそらく、相手の顔を見て知ってはいるが言いたくないということなのだろうとLは思っている。
(やはり、この事件の鍵を握るのはジェイムズ・クロンカイトということか……刑務所へ戻った時の制裁処置をおそれて、誰も何も言いたがらないのだろう。それじゃなくても、この地下鉄テロの犯人は爆発物の入っていたダンボール箱を始末し忘れるというミスを犯している。そのことを思えばなおさらだろう)
 そしてジャック・ティンバーレイン、彼が家族と住む部屋の他に借りていたフラットからは、荷造りを終えて後は発送を待つばかりの爆発物の入った小包が三十三個見つかっていた。これはまだレイ・ペンバーの家宅捜査の結果を待たなければはっきりとしたことは言えないにしても――Lはおそらく自分の推理は正しいだろうとほぼ確信していた。爆発物を作成したのはサミュエル・ビュターンであり、その発送係を承っていたのがティンバーレインだということだ。地下鉄やバスのテロ実行犯にそれを送り届けていたのも、ティンバーレインである可能性が高い……Lは、MI5のテロ対策本部からワタリ経由で送られてきた捜査資料に再び目を通す。そこには、クリスマスに小包を送る予定だった三十三人の名前が書き記されていた。ざっと見てすぐに思いつくのは、クロンカイトの裁判で判事を務めたジェフリー・アプショー、またその時陪審員席にいた人間の名前、あるいはクロンカイトにとって不利な証言をした証人の名前が列記されているということだった。
(なんという執念深さ……)と、Lはここまでくるとある種の尊敬さえ感じでしまうほどだった。(だが、ここまであからさまでは、自分に疑いがかかるとは思わなかったのだろうか?それとも、罪はすべてティンバーレインとビュターンに被せればいいと計算してのことか……あるいはそれだけ相手に対する怨みが深かったのか……)
 地下鉄・バステロ事件にはじまり、未遂で終わったクリスマス爆弾事件といい、クロンカイトは刑務所の中で自分の高い知能と時間をもてあまして今回の計画を周到かつ入念に立てたのだろう。そのIQ175の頭脳を、もっと他の建設的なことに使っていたらと思うと、Lは残念なような気がして、思わず深い溜息を着く。
(それよりも、わたしはこれ以上余計な邪魔が入らないうちに、ラケルに会いにいかなくては……)
 そう思い、彼が椅子から立ち上がろうとしていると、携帯が鳴った。レイ・ペンバー専用の携帯電話である。
「はい、Lです」
『あ、Lですか』と、レイは急きこむように話しだす。そのせいで、Lが今ちょっと、と言いかけた言葉も、かき消されてしまった。『やっぱりこの場所はサミュエル・ビュターンの隠れ家でしたよ。こいつら、クリスマスにロンドン橋とウォータールー橋とウェストミンスター橋に爆弾を仕掛ける計画を立てていたんです。その計画書や爆弾の図面などが次から次に出てきました。先ほど本部から電話があって、ビュターンのことは聞いています。こちらでも、TVでBBCのニュースを見ながら捜索を続けているところで……』
「そうですか。ご苦労さまです」と、Lは素っ気なく答えた。これらの事件はもうほとんど解決したも同然で、Lとしては後は警察機関の人間の報告書を待てばいいという状況なのだ。「クリスマスに橋に爆発物を仕掛けるという計画を立てていたんですか。おそろしいことですね……未然に防げて何よりです」
『なんだか、気のない返事ですね』
 レイはLがさぞ驚き、お手柄だというようなことを自分に言ってくれるものと期待していたが、彼はまるでそんなことは予想していたというような言い種だった。
「いえ、主犯格の人間のうち、ひとりは死亡、もうひとりは逮捕……この事件については、ティンバーレインがどこまで何を話すかだとわたしは思っています。何しろ、重要な仲間のうち、ひとりは自殺しているんです……都合の悪い罪はビュターンひとりになすりつけるということも、彼には十分可能でしょう。後は物的証拠と、彼の良心の問題ですよ」
『それはそうですが……クロンカイトの名前は、まだ犯人たちの口からひとりも出ていません。そうなると、このままでは……』
「あなたの言いたいことはよくわかります。わたしが今考えているのもその点についてですから、捜査が進展して何かいい案が浮かんだら、また連絡するかもしれません。すみませんが、今取りこみ中なので、本日はこれにて失礼します」
 ブツリ、とほとんど一方的な感じで電話が切れる。レイは証拠品の宝の山ともいえるビュターンの隠れ家で、(やれやれ、ほんとにこの人は……)と思いつつ、とりあえずは自分のなすべき仕事を片付けることに専念しようと思った。ここが片付かないことには、愛する婚約者の待つフラットにも戻れない。いくら同じ捜査機関で働いた経験のある、理解ある恋人であったとしても――こう午前様が続いたのでは、結婚前に愛想を尽かされるとも限らない。
 レイはそう思い、クロンカイトのことについては一旦、忘れることにした。重要な証拠品として化学薬品や爆薬やダイナマイト、改造銃など、およそ四百近くもの品を次から次へと押収していく。
(そういえば、あの女性がどうなったか、Lに聞き忘れてしまったな)
 レイはそう思いだしたが、それも一瞬のことだった。そのことはLに任せておけば何も問題ないと、彼はそう思っていた――Lがおそらく保護して親族に会わせるなりなんなりしてくれるだろうと。
 まさか、その<親族>に当たるともいえる人間が、L本人だとは、当然レイには思いもよらないことだったけれど。



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【2008/08/19 14:59 】
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