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探偵L・ロシア編、第Ⅵ章 ペンタグラム・プログラム
探偵L・ロシア編、第Ⅵ章 ペンタグラム・プログラム

 話は若干前後するが、その時天才的ハッカー、イムラン・ザイツェフはモスクワ郊外にある鄙びた別荘(ダーチャ)で、ロシア政府のデータバンクに侵入するための暗号解読プログラムを作成中だった。そして無事政府のデータバンクに侵入を果たすと――ー般にケルベロス・プログラムと呼ばれるレベルAのコンピューターデータ保護プログラムを破ってその中へと侵入を果たした。時刻は真夜中過ぎのことで、部屋に彼以外の仲間は他に誰もいない。彼は自分の首領であるアスランに「無理なことはするな。慎重にやれ」と指示されてはいたものの、どうしてもロシアの高級官僚の豚どもに一泡吹かせてやりたいという誘惑に打ち勝つことができなかったのである。
 いずれにせよ、『灰色のオオカミ』幹部メンバーの間で、次の標的にすべきはミハイル・オルフョーノフ政府副議長であるとの決定はすでになされていた。しかも手筈どおりにいけば、彼は二日後か三日後に、自動車に仕掛けられた爆薬によって死亡する予定であった。準備はすべて万端整っている……オルフョーノフ政府副議長が乗る高級車のジルは今、モスクワ市内にある自動車修理工場で整備を受けているところだ。そこに自動車整備工として勤めるアスランの遠い親戚のイングーシ人が、二日後か三日後に、爆薬を仕掛けたその黒塗りの高級車を自宅まで返却しにいくということになっている……先に予告してしまえば、当然政府副議長を守るための警備態勢は強化されるだろうが、彼らにはその作戦を成功させるだけの十分な自信があった。
 もちろん、ロシア政府のデータバンクに侵入したのは、何もわざわざ<警告>のメッセージを残すためではない。イムランたちにとって必要だったのは、国防省や内務省や連邦保安局、また軍諜報部にあるであろうチェチェン戦争関係のデータ・ファイルだった。夜な夜な覆面を被ってやってくる、ロシア連邦軍の<掃討作戦>という名を冠した略奪行為や誘拐といった犯罪の証拠となる書類をどうしても手に入れたかった。連邦軍の連中は覆面を被って素性を隠した上、やりたい放題のことをしてからいつも街をでていく――少なくとも、イムランのいたグローズヌイではそうだった。もっとも、仮に兵士の階級や顔、さらには名前までわかっていたとしても、なんにもならないことはチェチェンに住んでいる者なら誰しもが知っていることだ。あそこでは行政機関も立法機関も死んでいて、訴えることのできる検察庁の人間ですら、軍の連中とグルになっている。だから正しく公平な裁判などは行われようはずもなく、ロシア軍のすべての罪が恐るべき欺瞞性とともに野放しにされているのだ。しかし、いかに連邦軍の連中がチェチェンで起きていることをひた隠しにしようとも、必ずどこかに裁判にまで持ちこめるような、決定的な証拠となるべきものが残されているはずだった。その証拠に、というべきか、国防省と内務省、連邦保安局と軍諜報部のコンピューター保護プログラムは他の省庁のものとは違う、ケルベロス・プログラムをさらに強化した保護プログラムが採用されていた。
(ペンタグラム・プログラムか……)
 イムランはぺろりと舌で上唇を湿らすと、
(さて、どうしたものかな)と考えた。(こいつに下手に手だしすれば、こっちのコンピューターがCPUごとやられてしまう……)
 ここでは、イムランがどうやってこのペンタグラム・プログラムを破ったのかは詳しく書き記さないが――簡単に説明するとすれば、それはこういうことである。イムランは国防省や内務省、連邦保安局や軍諜報部以外の省庁のデータ・ファイルには一切手出しをしなかった。それら外務省や財務省、保健省、出版情報省、民族問題担当省……といった各政府機関には、ただプロテクト・プログラムを破って書き置きのメモを残しただけである。ようするに、コンピューター・プログラムをエジプトのピラミッドに例えるのが一番わかりやすいかもしれない。ケルベロスというのは言うまでもなく、ギリシャ神話にでてくる地獄の番犬のことであるが、これがコンピューターのデータが無断で盗まれるのを守るガーディアンの役目を果たしているわけだ。普通に接触したとすれば、すぐにアクセスは拒否される……生半可な暗号解読プログラムでも侵入は困難で、ケルベロスに送りこんだコンピューター・ワームを骨の髄までしゃぶりつくされるのがオチと言ってもいい。では、どうするのが一番いいか?それには番人に気づかれることなく、どこか別のところからプログラムを崩してピラミッドの最奥に眠る財宝に到達するというやり方がもっとも望ましい。つまり、イムランは次のような方法をとった。ケルベロスたちにフェイクのコンピューター・ワームを与えている間に――そのウィルスがケルベロスに食べ尽くされるまでに六十秒かかる――盗掘者よろしく、別のところから保護プラグラムをぶち壊して、中に侵入したのである。しかしながら、ピラミッドに眠る財宝の数々には手をつけず、ただ警告文だけを残してすぐにそこから退出したというわけだ。
 コンピューター用語を長々と書き連ねて説明したとしてもつまらない文章になるだけなので、そのように理解していただけるのが一番わかりやすいと言えるだろう。さて、肝心のペンタグラム・プログラムであるが、イムランはいくつかの暗号解読プログラムを試してみて、ある法則性に気づいていた。これもまた簡単にわかりやすく書き記すとしたら、次のようなことになる。ペンタグラムというのはようするに、正三角形と逆三角形を重ねあわせたイスラエル民族の象徴であるダビデの星である。そのダビデの星の六つの地点を起点として――まあこの場合仮に、大きな石が置いてあったとしよう。この六つあるどこかに接触すると、別の石が動きだして両方から挟み撃ちにする形で、侵入してきたコンピューター・ワームを消去してしまう。だが、石の動く起点は六つでも、置かれている石は五個であるという規則性にイムランは気づいたのだ。何故ならひとつの石を動かす時に、必ず通路が必要となり、どのパターンでも必ず石の通り道を用意しなくてはならないとなると――石が六つ各起点に置かれていたのでは都合が悪い……つまり、石の置かれていない地点はどこか、そのパターンを検索すればいいということになる。
 言葉で簡単に説明すればそういうことになるが、イムランはその法則性に気づいた時、このプログラム・プロテクトを作成した人間のことを天才だと感じたし、思わず鳥肌が立ったほどだった。そしてロジック・スペース内にあるダビデの星のイメージを掴むと、とうとう最終的に、五つの石をひとつの地点に集結させることができた。つまり、それがふたつの石で破壊できるコンピューター・ワームなら、石の移動が起きるのはひとつだけということになる。そしてふたつの石で破壊が不能なら、三つ目の石の移動が起こり、三つ目の石でも無理ならさらに四つ目の石が動き……そして五つ目の石が動いた瞬間に、イムランは無防備になった保護プログラムを崩しにかかった。五つの石はたとえるなら五角形をした六十階建てほどもあるビルをそれぞれの方向から一秒につき一階ずつ、同時に崩しにかかっているようなものだった。つまりこの場合も、ケルベロス・プログラムと同じく、コンピューター内部に侵入して無事脱出するまでに六十秒の時間しかないということになる。
(六十秒……急がなければ……)
 イムランはストップウォッチをちらと見たが、すぐにある不都合が生じたことがわかって焦燥した。画面に『最終パスワードを入力せよ』との表示が出ている――そんなもの、わかるはずがない。三十秒、二十秒……ストップウォッチの時間は容赦なく進んでいく。そしてロジック・スペース上の六十階建てのビルが最後の一階だけになった時、彼はいちかばちかでパスワードを入力するためにキィを急いで叩いた。<東方の三博士>――それがイムランの入力したパスワードだったが、押しても引いても開かない扉に向かって「開けゴマ!」と叫ぶのと同じく、それはただの当てずっぽうだった。ダビデの星はイスラエル民族の象徴、そしてその形は三角形をふたつ合わせたもの……そう考えて導きだした答えだった。
 だから、次の瞬間にはおそらく、こちらのコンピューターのCPUがやられて、スクリーンがブラックアウトするとばかり思っていたのに――画面に『アクセス認証』の文字が浮かんだ時には驚いた。
「そんな馬鹿な……っ!」
 自分以外に他に誰もいない狭い部屋で思わずそう呟いてしまい、イムランは自身の発した声によってハッと我に返った。キィボードを叩く手が思わず震える……もしかしたら何かの罠かとすら考えたが、国防省や内務省、連邦保安局のデータをいただくためには、ぐずぐずしてもいられない。
 こうしてイムランは、ほとんど幸運な神の助けによって――彼と彼の所属するテログループ『灰色のオオカミ』のメンバーは、それをアラーの助けとお導きと信じて疑わなかった――国防省や内務省、連邦保安局のコンピューター・データをハッキングし、チェチェン戦争に関する極秘の機密書類があるのを発見した。国防省と内務省及び連邦保安局がそのハッキングされたという事実を何故あの会議の場で正式に発表しなかったか、それにはやはり理由がある。国防省副大臣であるマモーノフは、自身が国防相になれるかどうかという微妙な立場だったわけだが、そのような機密事項をプーチン大統領に隠すわけにもいかず、大統領とふたりだけになれる場を作ると、その事実を正直に打ち明けていた。大統領はマモーノフからその話を聞かされた時、内心では動揺していたが、いつもどおりの氷のような表情のない顔を崩しはしなかった。国防省の機密文書がマスコミにでも流出したとなれば、それは大変なことである……が、マモーノフが事態の重要性を認識して正直に打ち明けたこと、それこそが実は彼が次の国防相になった大きな決め手であった。内務省の、いってみればプーチンの子飼いともいえる大臣、シャフナザーロフは、事実の隠蔽のためにハッキングをしたと思われる部下を無理矢理にでっちあげて、その人間はすでに処罰したとプーチンに連絡してきた。だが、内務省のお世辞にもクリーンとはいえない体質を知り抜いている大統領はその部下が無実であろうことをほとんど確信していた。それに引きかえマモーノフがとった態度は実直で誠実なものであったことを大統領は高く評価した。彼は自身の昇進のことなどよりも、国に忠誠を尽くすことのほうを優先させたからである。プーチン大統領は、額に脂汗を浮かべて恐縮しているマモーノフ副大臣に向かって、微笑みすら浮かべながらこう囁いた。
「あのコンピューター保護プログラム……ペンタグラム・プログラムとか言ったかな?あれは我が国がアメリカに大金を支払って購入した特別なコンピューター・プログラムなんだよ。それをどんな天才ハッカーか知らないが、内部からではなく外部から打ち破った人間が存在するのだ。これはまさしく由々しき事態……我がロシアにとってだけでなく、アメリカにとってもね。これがどういう意味か、マモーノフ副大臣にもわかるだろう?」
「は……ははっ」と、将軍として部下に命令を下すことに慣れているマモーノフも、この時ばかりは下士官が自分の上官に不手際を釈明する時のように、恐縮しきっていた。だが、彼はコンピューターの専門知識に乏しかったし、これからどんな責任を自分はとらされるのだろうと想像することさえできなかったので、ただひたすら赤い絨毯の一点を睨むように見つめることしかできなかった。
「つまりね、君にはこの件に関して責任などないということだよ。ペンタグラム・プログラムはアメリカの国防省……ペンタゴンでも基本的には同一のものを使用しているという話だ。それを外部から打ち破られたということは、なんらかの手落ちがアメリカにあったとしか思えない。この件についてはわたしがアメリカの大統領に直接電話で問いただしてみることにする……この分野に関しては我が国は少々遅れているように向こうには思われているようだが、そんなことはとんでもないということを、ホープ大統領にはわからせてやるさ」
「…………………」
 プーチン大統領はマモーノフ国防省副大臣の肩を励ますように軽く叩くと、彼が執務室から退出するのを待ってから、米大統領デイビット・ホープ氏に電話をした。そしてホープ大統領はロシアの大統領であるプーチンと二十分ほど会話してから電話を切り、今度はFBIのスティーブ・メイスン長官と連絡をとった。相手が国防省長官でもなくCIA長官でもなかったのは、一重にメイスン長官がアメリカでもっともLに近い立場にいる人間だったからである――何故なら、あのペンタゴン・プログラムと呼ばれるコンピューター保護システムを作成したのは、他でもない世界一と言われる探偵、Lその人だったからである。

「はい……ええ、そうですか。ペンタグラム・プログラムが……それは凄いですね。あれを内部のコンピューターからでなく、外部から破ったというのは凄いですよ……感心してる場合じゃないって言いますけど、そのくらい凄いことだっていうことくらいは、自覚してください。とりあえずの対応策はパスワードを二重三重にするとか、そんなところじゃないですか。それよりわたしは、一体誰があのプログラムを破ったのかを知りたいですよ……ペンタグラム・プログラムを外から破れそうな人間は、わたしの知りうるかぎり、世界でもふたりくらいのものですからね……一人目はメイスン長官も知っているでしょうが、現在コンピューター犯罪で捕まってフロリダの刑務所にいるダニエル・レヴァイン、二人目はイザーク・ロカンコート。ところでメイスン長官、ロカンコートが今どこにいるかはわかってますか?」
『もちろんこちらとしても確認済みだ』と、メイスン長官はいかにも自信ありげに請けあった。『奴は今カナダにいる……相変わらず裏の仕事で稼ぎまくって、いい生活をしているようだな。カナダ警察も目を光らせてはいるんだろうが、奴め、アメリカにいた時と同じくなかなかこっちに尻尾を掴ませないらしい……まあ、今大切なことはロカンコートがロシアの件に関わっているかどうかだな。とりあえずアリバイを調べたところ、ロカンコートがその時間にはパソコンに触ってもいないということまでわかってるんだ。もちろんこれまでロシアへは旅行でもいったことは一度もない……結論として奴はシロということになる』
「そうですね。疑う余地はまったくありませんが、ちなみにロカンコートはその時間一体何をしていたんでしょうか?」
 Lはふと疑問に思ったことを口にしてみた。重いコンピューター犯罪が起こるたびにアメリカではまず真っ先に彼の名前が挙げられるが、残念ながら逮捕歴だけはいまだに一度もない男だ。そんな彼がペンタグラム・プログラムを破るためにロシアのマフィアか誰かに雇われたとも考えにくいが、一応個人的な興味として、そう聞いてみた。
『酒場で飲んで、暴れたらしくてな……しかも警官にまで突っかかったっていうんで、留置場にまで入れられることになったんだ。故にロカンコートはほぼ百パーセントシロだと言い切れる』
「そこまで白いと、かえって疑いたくなっちゃいますけど、まあ間違いなく完全にシロってことですね、それは。第一、ロシアにいってもいないんですから、仮にアリバイなんてなくてもわたしは彼以外に犯人がいると見て捜査したでしょうしね」
『では、この件はLにお任せしてもいいということに?』
 例のイラク問題で、今後暫くの間は捜査協力しないと宣言したLだったが、この仕事だけは正直引き受けざるをえなかった。何故なら、ペンタグラム・プログラムを組んだのが他でもないL自身であることもそうだが、何より――あれを打ち破ったのが誰なのか、相手の犯人を捕まえて知りたかったからでもある。
「あれ、わたしとしてはなかなか改心の出来と思って自惚れてたんですけどね……今軽くショック受けてます……パスワードが<東方の三博士>っていうのも、ちょっと安直だったんでしょうか。まあ、また何か新しいプロテクト・プログラムを開発したら、そちらに連絡しますよ。じゃあまあ、そういうことで」
 Lはメイスン長官との回線を切ると、コキコキ首を鳴らして、片方の肩を手で揉んだ。隣の部屋からは、すっかり仲良くなったラケルとレオニードが、何やら談笑しながらTVを見ているところだった。ラケルが嘘をつくのが下手なせいか、彼女が実は秘書ではないということはすぐにバレていた――のだが、レオニードは内心そうとわかっていながら白々しくいつまでたってもラケルのことを「秘書さん」と呼び続けていた。たとえば、「俺のことは放っておいて、そっちの部屋で秘書さんと寝たって構わないんだよ」とか、「こんなべっぴんの秘書さん、竜崎は一体どこで見つけたんだい?」といった具合に。
(やれやれ。こっちの気も知らないで、レオニードは気楽でいいな。まあ、とりあえずまずはこれでロシア政府に潜りこむ口実ができて良かったものの――『灰色のオオカミ』が次にどう動くのかも気になる。「次はおまえの番だ」か……わたしの考えによれば、次に犠牲者がでれば、暗殺されたのはそれで三人目ということになるな。ザオストロフスキー大統領補佐官の死は、ほぼ間違いなくアスラン・アファナシェフがコワレンコ医師に手を回して仕組んだものだ。そして次のスハーノフ国防相の死……マスコミはマフィア絡みとして報道しているが、スハーノフは実際には裏のマフィアたちともよろしくやってる口だった。そんな彼を亡き者にしても、マフィアには損になっても得なことはあまりない……いずれにせよ、次にどんな形で誰が死ぬかによって、最終的にはそれがテロリストの手によるものだと判明するだろう。何か大きな事件が起きる前に未然に防ぐには、ペンタグラム・プログラムの件でプーチン大統領と近づきになり、ロシア政府の内部情報をもっと詳しく知る必要がある……もっとも、政府のデータバンクに公式にアクセスできる許可さえもらえれば、ほとんど自動的に解明できたも同然、ということになるか?……)
 Lがいつもの座り方をして、革張りの椅子の背もたれに体を預けていると、隣の部屋から食器の割れる音が響いてきた。だが、Lはどうせラケルが手を滑らせたのだろうくらいにしか考えていなかったので、特に頓着せずにそのまま考えごとを続けていた。ところが、レオニードが顔色を変えて薄暗い部屋に飛びこんできたので、流石にLも何かあったらしいと思わないわけにはいかなかった。
「竜崎、オルフョーノフ政府副議長が……!」
 Lもまた、レオニードとともにリヴィングとなっている部屋で、すぐにTVのニュースに釘づけとなった。

<今日の午後三時頃――オルフョーノフ政府副議長を乗せたジルが、ホワイトハウス前で突然爆発、炎上しました。この事故で亡くなったのはミハイル・オルフョーノフ政府副議長、そして運転手のヴィクトル・ルキンさん、それからオルフョーノフ副議長の護衛の任に当たっていたFSO(連邦警護局)の職員、セルゲイ・ボルダルスキーさん、ユーリー・ドミトリーエフさんの四名です。オルフョーノフ副議長はシェメレチェボ国際空港へ向かう予定だったところをテロリストと見られる犯人の一味に狙われたものと見られています……繰り返します。緊急ニュースです。今日の午後三時頃……>

「大変なことになりましたね……」
 Lはホワイトハウス前で炎上している、黒塗りの高級車、ジルが消防署の職員らの放水作業によって火が消されていくのを見守りながら、(急がなければ……)と内心焦りを覚えはじめていた。『灰色のオオカミ』が次に誰を標的にするのかはわからないが、とにかくそれが誰でも、なるべく早く止めなければならない。L自身は与り知らぬことではあったが、プーチン大統領自らが言っていたとおり――このままではいずれ『灰色のオオカミ』は恐ろしいテロ集団と見なされて、メンバーのひとりでも捕まろうものなら、秘密裏にどんな拷問を内務省の特別警察あたりにでも受けるかわかったものではなかった。
 そうなのだ――L自身はロシア政府の味方でもなければ、プーチン大統領の賛同者でもなく、さらにはチェチェン人テログループ『灰色のオオカミ』に同情して肩入れするつもりもまったくなかった。L自身はただ、このままいってもどちらのためにもならないということがわかっているだけだった。もちろん、プーチン大統領が今回のことを機に、チェチェンから手を引いてくれるのが一番良い策ではある――だが、レオニードからプーチン政権の内幕、また実際のチェチェン共和国における凄惨な状況を聞くかぎりにおいては、今彼の地で起きている戦争は誰にも止められそうにない。仮に大統領が止めたいと思っても、政権絡みの利害関係が邪魔をして現実的に止めるということは不可能に近いことなのだ。軍内における腐敗――略奪行為、誘拐、虐殺、強姦といった戦時に起きた犯罪を戦争終結後に裁かれることを将校も兵士たちも怖れているし、何よりあの戦争ではあまりに理不尽なことが行われすぎた。検問所では常に賄賂のやりとりがあり、「高級」と呼ばれる将校たちは戦争資金を個人運用し、他の兵士たちは誘拐やら略奪行為やらで金を稼ぎ……連邦軍の中でそうした犯罪行為に手を染めなかった者は――あるいは<敵>である武装勢力に手を貸しているチェチェン人たちに哀れみや情をかけてやった者などは――仲間の手によって殺されることさえあったのだ。そして理不尽な手段によってより多くの罪のない人間を殺した将校が、プーチン大統領から高い職位や褒賞や出世を約束され続けたというわけだ。それと石油資源の問題も大きいことをつけ加えたなら、これはもう――国連かアメリカ、あるいは西側諸国に大きく動いてもらわなければ解決できない問題だった。それでは果たして国連は何をしているのか?国連は実際には何もしていない――ロシアがテロリストに対して正義の戦争をしていると言い張っている以上、そこに干渉することは事実上できなかったのである。
「オルフョーノフ政府副議長とは、個人的に少しばかり親しいつきあいがあった……彼はとても気さくで、いい人間だった。それがこんなことになるなんて……」
 レオニードは呆然自失としている様子だった。彼はもしかしたらこう思っていたのかもしれない――アスランたち『灰色のオオカミ』も、テロを行う際、政府の高官を暗殺する際には、裏で相当に汚いことをしている人間から順に殺していくだろう、と。だが、テロや戦争といったものはいつでも、無関係な人間や直接犯罪や政治に関わりのない者たちを嫌が上にも巻きこむものなのだ。そして他の第三国の第三者たる国民たちも、TVのニュースなどを見て、何をどう判断したらいいのかがわからなくなる。テロを起こす人間の心理がわからないではない――自分だって自国の民族に同じ血の制裁が加えられたなら、まったく同じことをするかもしれない。だが、テロというものを断じて許すことはできない……だからといって、どうすればいいのかがわからない……といった具合に。
 ここでもっとも悲しいのは、アスランたち『灰色のオオカミ』が、自分たちの民族に加えられたもっとも悲しむべき行為を、自分たちの手で直接行い、その手を血で染めてしまったことだ。ミハイル・オルフョーノフは愛妻家として有名な人物で、随分遅くになってからようやくできた子供はまだ六歳だった……この衝撃的なテロは、TVでも大々的にとりあげられ、『テロ、許すまじ』とのロシア人の国民的な総意がますます高まる結果となった。だが、アスランもイムランもルスランもジョハールも、オルフョーノフのことを気の毒とは感じなかった。自分たちの強姦されて殺された妻のこと、誘拐されて拷問にかけられた親兄弟のこと、目の前で殺された父や母、妹や弟……どれも普通の死に方ではなかったのだ。ある者は捨てられた遺体に耳がなかったり、腕がなかったり、足がなかったりしたし、その他にも殴られた痕、電気拷問にかけられた痕やら、チェチェン人に与えられた恥辱や侮辱や屈辱は、書いても書いても書ききれるものではない。中にはとても口にだして言うことが憚られるような、凄惨なものまでたくさんあるのだから……。
 そこまで追いつめられた人間のことを知っている者たちにしか、わかったようなことを言ってもらいたくはなかった。それがアスランたちの真実の心の叫びだった。
「……近いうちに、わたしはプーチン大統領に会いにいきます」と、肩を落としているレオニードに向かって、Lは静かに言った。「あの呪わしい戦争は、まだ当分の間続くでしょう……実際のところ、チェチェンの独立を認めるべきだとするヤブロコ(ロシア語で、りんごの意味)党が政権でも握らないかぎり、チェチェンに平和が訪れることはないのかもしれませんね……でもそんなことはあまり現実的な話ではないし、プーチン大統領は今のところ国民に人気があるようですし、わたし個人が何かをどうにかできるともまったく思いません……でも、これからイラクで起きるであろう恐ろしいことのためにも、何かここで楔をひとつ打ちこめればと思うんです。とりあえずは、大統領への手土産に、国防省のコンピューターを守るための保護プログラムを作成します……ラケル、わたしは今日は徹夜しますから、遠慮なく先に寝ていてください」
 レオニードが落としたカップの破片を片付けていたラケルは、Lに向かってただ黙って頷いた。自分にできるのはせいぜい――彼が夜中に飲むためのコーヒーや紅茶を準備しておくくらいのものだったろう。あとは寝る前にアップルパイを夜食がわりに焼いたりすることくらいだろうか。
「……竜崎、あんた本当に一体何者なんだ?」レオニードは、どうせ聞いても答えてもらえないだろうと思って、それまであえて訊ねてこなかったことを、初めて口にだしてしまっていた。そのくらい、昔の学友が親しいつきあいのあった友を殺したということが、ショックだったのだ。「大統領なんて……会おうと思ったって、ジャーナリストの俺でさえアポをとるのは大変なんだぜ――それを、多国籍のあんたが、国防省の保護プログラムを手土産に会いにいくって……あんた、どう考えたって普通の人間じゃないだろう」
「……少し、しゃべりすぎたみたいですね。仮にもしわたしが普通の人間でないにしても、おそらく結局は何もできずに終わるだろうと思っています。そうですね……それでも、大統領が暗殺されるのではなく、暗殺されかけることによって、少しは考えを変えてくれるといいのですが……とりあえず今は時間がないので、これ以上は何も説明できません。ぐずぐずしていると、このまま第四、第五の犠牲者がでてしまう……ロシア政府や内務省、FSBだって馬鹿じゃない。テロは回を重ねるごとに危険なものになっていき、必ず犯人はなんらかの証拠を残してしまうでしょう。その結果仲間のひとりが捕まりでもすれば、それこそそこで再び悲劇が起こるんです」
 Lはふうっと溜息を着くと、アメリカの大統領は何故、チェチェンで起きている戦争のことを思ってもみないのかと不思議で仕方なかった。イラク派兵はまだなされてはいないが、アメリカがまさしく自国から反対側の国までいって、現在チェチェンで起きているのと同じ泥沼の戦争に片足――あるいは両足だろうか――を突っこむのは火を見るより明らかだった。
 Lは時々ひとりでブツブツ独り言を呟きながら、ペンタグラム・プログラムを改変して作成した、『クレムリン・プログラム』をなんとか徹夜で完成させた。そしてラケルが誕生日の日にくれた藍色のセーターを、いつもの長Tシャツの上に重ね着してホテルからすぐそばのクレムリンまで出かけたのだった――外の気温は現在零度。モスクワの十一月は寒かったが、にも関わらずLは相変わらず靴下さえはいていなかった。しかもセーターを着た下は古びたジーパン……それでロシアの大統領に会おうというあたり、心臓に毛が生えているとしか思えなかったが、幸いプーチン大統領はFBIのメイスン長官からある程度Lについて説明を受けていた。「ちょっと風貌はおかしいが、できる男」――というように。
 そんなようなわけで、Lは突然アポなしでクレムリンまで出かけていき、プーチン大統領と執務室で謁見した。もちろん大統領とて暇な人間ではないので、本当はその時間は来露中のアメリカ合衆国副大統領と会食の予定が入っていたのだが――Lがメイスン長官とかけあって、その予定をキャンセルしてもらうよう米副大統領には予め伝えてあったのである。
「お初にお目にかかります、スタニスラフ・プーチン大統領」
 白と青と赤のロシア国旗が翻っている部屋で、Lは月光を浴びた雪を思わせる顔つきをした、ロシアの大統領とまずは親しげに握手を交わした。
「こちらこそ……Lの噂はかねがね聞いております。今はたまたまある事件を追ってロシアに滞在中であるとか……サイラス副大統領も、あなたの手腕については褒め称えておりましたから、このたび当国で起きた事件も、Lならば速やかに解決してくださるのでしょうね」
「それはまだわかりませんが……」と、Lは大統領に椅子を勧められても断り、立ったまま話を続けた。「大統領もこのあとスケジュールが詰まっておられることと思いますから、単刀直入にお訊ねします。先日オルフョーノフ政府副議長が亡くなられたあの事件――あのテロ組織の狙いはなんだと考えておられますか?」
「さて……オルフョーノフ副議長のことは気の毒だったとは思うが……一口にテロリストと言っても、モスクワにはそうした危険分子がたくさんいるんですよ。ロシアの経済は裏でマフィアが握っていると噂されているとおり――利権絡みで政治家が暗殺されるということもありますし、またテログループがチェチェン戦争で起きていることのために、劇場を占拠して立てこもるといった事件も起きたばかりですからね、あらゆる可能性を考慮してオルフョーノフ副議長の事件のことは捜査するよう指示してあります」
「模範的な回答、ありがとうございます」と、Lはどことなく皮肉げな顔つきの大統領に、嫌味ではなくそう返答した。そして自分の考えを開陳してみせる。「これはわたしが調査した結果、ある筋から入手した確実な情報なのですが――テログループ『灰色のオオカミ』の一番の目的は、あなた……プーチン大統領の暗殺だということを、ご存じですか?」
 大統領は机の上で組んでいた両手をほどくと、革張りの椅子を回転させて、暫くの間窓辺から外を眺めていた。
(ある筋から入手した確実な情報だと?つまりそれは、テロ組織かそれに近いものから入手したということではないのか……この男、本当に信用できるのか?)
「遠まわりな駆け引きはやめにしましょう、大統領」Lは相手が初めて会ったロシア連邦のトップでも、少しも臆することなくいつもの調子で淡々と続けた。「わたしがその情報をどこから手に入れたのかというのは、今の段階では誰にも話すことはできません。また、大統領がわたしの言うことをただの戯言か妄想だと決めつけてくださってもまったく構いません……ただし、その場合はこれからも政府の高官が次々と殺されていくことになるでしょうけどね……オルフョーノフ副議長の死に方を見たでしょう?連中は目的のためには手段を選ばない……最後には、自分の体にダイナマイトを巻いてでも、あなたを殺そうとするだろうことが、わたしにはわかっています」
「そ、それは……」と、彼にしては珍しく、顔が強張り、表情に動揺が走った。後ろで手を組み、窓辺に顔を向けた姿勢のままではあったが、大統領が今どんな表情をしているか、Lには見なくてもわかるような気がした。「……それはようするに、国の警護態勢のレベルを上げても、あまり意味はないということなのだろうな。レバノンのシーア派のイスラム教徒と同じく――ダイナマイトで自殺することを<聖戦>(ジハード)と呼ぶような連中を相手にしたのでは、命がいくつあっても足りない」
「そのとおりです。彼らの要求はただひとつのことだけなんですから……それが何か大統領にもおわかりでしょう?チェチェンからは手を引いてください。大統領も命がお大事なら……それしか方法はないと心得ていただけませんか?」
「残念ながら、それはできんよ」プーチン大統領は、意外にもすぐにそう即答した。振り返った彼の顔は、決意に満ちており、まったく揺らぎがなかった。「君もあの戦争に関しては色々調べてからここへやってきたんだろう?国の恥と言われようとなんだろうと、わたしにはあの戦争を止める力はない。仮にわたしがテロリストに爆殺された悲劇の大統領として歴史に名を残そうとも、だ。逆に言うなら、止められるものならとっくに止めている……だが、どうにもできない。チェチェンはロシアのアキレス腱と他国の人間が言っていることも、もちろん承知している。だが、それがどうした?アキレス腱など切れても他の部分が無事なら――人間は十分満足に、そして快適に生きていける、そうは思わんかね?多少足は不自由になろうとも、だ」
「…………………」
 予想どおりの答えが返ってきたことにLは絶望したが、まだ絶望的な希望――矛盾した言い方ではあるが、そうとしか表現の仕様がない――が残されていないでもなかった。それはこれからも『灰色のオオカミ』によるテロ行為が続き、アキレス腱が切れる痛みにプーチン大統領自身がとうとう耐えきれなくなる、という選択肢だった。
「それではもう、わたしには何ひとつ申し上げられることはありません。このディスクには――アメリカ国防省のデータバンクを守るために作成した、ペンタグラム・プログラムを改変した『クレムリン・プログラム』が入っています。あれが外から破られたのは、作成したわたし自身の落ち度によることですから、これは一応責任をとるということで、無料でお引き渡し致します。それでは」
「……君、待ちたまえ」
 軽く敬礼をして大統領執務室を辞去しようとしたLのことを、プーチンは引きとめた。
「君に――それを作ることができるということは……ハッキングした人間の居場所を特定するということもできるということなんじゃないかね?今マスコミが騒いでいる、例の怪文書のことは君も知っているだろう?武装テログループ『灰色のオオカミ』のアジトを突き止めることができれば……これ以上誰も犠牲にならなくてすむんだ」
 何やらLにとっては気に入らない、嫌な展開ではあったが、大統領の言うことは確かに正しかった。そしてLは正義というものに逆らうことができない質だった。何故なら、いつもそちら側に身を置いている自分自身の信条と矛盾が生じてしまうからだ」
「……いいでしょう。しかし、わたしの腕を持ってすれば絶対に必ず敵の居場所を突きとめることができる、というようには考えないでください。わたしはわたしのやり方でやりますし、それを邪魔される場合にはロシアから他国に移動したいと思っています」
「わかった。わたしとしても出来得る限りの便宜は払う……とりあえず、何が望みかね?」
「何も」と、Lは短く答えた。「わたしの望みはロシアがチェチェンから手を引くことです。そうですね……さらに言うならあなたが、アメリカのホープ大統領に電話をかけて、イラクへいけばアメリカもアキレス腱が切れるぞと、ひとつ説教していただきたいものだと思いますが、それは無理な相談なんでしょうね……それと、わたしが何者なのかなどと、FBSの尾行をつけさせたりだとか、そうした無礼な真似も絶対やめてください。その場合にもわたしは、この件から一切手を引かせてもらいます」
「いいだろう。約束は必ず守る」
 クレムリンを出たあとLは、その足でそのまま真っすぐ国防省へと向かった。そして『クレムリン・プログラム』をセットアップしたあとで――残ったデータの残骸から、敵の侵入経路を割りだし、Lオリジナルのアクセス解析データプログラムにそれをかけた。
(なかなかうまいことやったな……密室殺人で言うなら、部屋の指紋を全部拭きとって完全犯罪を果たしたのに近いともいえる……が、それでもいくつか証拠は押収できた。わたし自身のコンピューター・ファイルに直接アクセスしてきたとでもいうのなら、すぐに追跡プログラムが使えたんだが……まあ、地道にやるとするか)
 Lは国防省内の情報管理局で、いかつい役人たちに胡散臭そうな顔をされながらそうした作業を行っていたのだったが、後はコンピューター犯罪担当の捜査官の出番ともいうべきところだった。もっとも、ロシアにコンピューター犯罪対策課のようなところがあるのかどうかLは知らなかったので、情報管理局の局長にそういう部署が警察にあるのかどうかと聞いてみることにする。すると、彼もわからないと言い、結局警察に電話して聞いてもらうことになった――警察では「その件はロシア情報庁の領分だろう」と言い、Lは最終的に、ロシア情報庁長官、ヴィクトル・スヴャトリフの元を訪れるということになった。
 以前あった例の会議で、自分の失態をとり繕うかのように、コンピューターの専門用語を駆使して急場を凌ごうとした、黒縁眼鏡の男である。もっともLはこの時知らなかった――『灰色のオオカミ』たちの次の標的が、他ならぬこの男、ヴィクトル・スヴャトリフであろうことなどは。

 ロシア情報庁長官、ヴィクトル・スヴャトリフはその日、朝から夕方までを恐怖におののきながら過ごしていた。「次はおまえの番だ」との新しい警告を記した手紙が今朝、自宅のポストに投げこまれていたからである。実際のところ、彼にはテロリストたちに狙われてしかるべき、後ろ暗いことがたくさんあった。スヴャトリフはザオストロフスキーのように、チェチェン戦争についてテロリストがいかに残虐で非道な行為を重ねているか、西側諸国をまわって説明して歩いたわけではないものの――ロシア国内における情報操作という面において、大体のところ狐の片棒を担ぐような形で、似たようなことを行っていた。彼は実際には、大統領に今起きている戦争をやめさせるだけの力がないこと(仮に大統領がそう命じても、軍部が必ず言うことを聞くわけではないこと)、今チェチェンがどんな悲惨な状況下に置かれているかということについても熟知していたといってもいい。無知とは罪、というが、彼の場合に限っては、チェチェンで起きているすべての真実を知っていながらあえて虚偽の報道規制を敷き続けたこと、それが最大の罪であった。
 当然のことながらスヴャトリフは、『灰色のオオカミ』からの犯行予告ともいえる手紙を受けとった段階で、すぐにプーチン大統領と連絡をとった。もちろん車に爆薬が仕掛けられていないかについても調べてあったが、もはや訓練を積んだ屈強な護衛官が何人自分の身を警護しようとも、彼には誰のことも信じられなくなっていた。これはある意味、FBS元将校の疑り深い皮肉な悲しみとも言うべきものである。スヴャトリフはプーチンがFBSの長官であった将校時代、彼に特別に扱われていた部下のうちのひとりであり――ということは、彼がどれだけ虚偽と欺瞞に満ちたことを行ってきたかは、あとは推して知るべしといったところ――プーチンが大統領になってからはそのコネでもって情報庁長官に任じられたようなものであった。つまり、プーチン大統領にとってスヴャトリフとは、自分を裏切ることなど絶対にありえない大切な駒のひとつであるといえた。何故なら彼が真実をロシア国民に向かって公にするということは、自分がこれまでしてきた悪事の数々を自らの手で暴くも同然のことだったからである。
 しかしながらその割に、その朝のプーチン大統領の態度はすげなく冷たいものだった。大統領はロシア政府のコンピューター・セキュリティが呆気なく破られたことに対して、スヴャトリフにすべての責任があると考えていたし、その後具体的な対策案が何ひとつ出されなかったことについても、彼に対して軽い失望を覚えていたのである。
 とはいえ、これまで長きに渡って可愛がってきた部下ではあるし、ザオストロフスキーに続いてスヴャトリフにまで死なれてしまっては、大切なポーン(歩兵)をもうひとつ失うようなもの……そう考えたプーチン大統領は、FBSから特別に訓練された人間を派遣して、スヴャトリフの警護に当たらせることにした。自宅や車、あるいはゆく先々のどこにおいても爆薬が仕掛けられていないかどうか、不審な人間の出入りがなかったかどうかなど、入念なチェックと厳しい監視が続けられた。
 そして午後の四時半頃――見るからに不審げな、東洋系の顔立ちをした「竜崎」と名のる男がスヴャトリフのいる連邦政府通信・情報庁を訪れた。当然ながら、今朝の怪奇文書のこともあり、スヴャトリフの護衛に当たっていたFBSの特殊工作員たちは「竜崎」という男のことを警戒した。だが彼は、『ペンタグラム・プログラム』と一言情報相に伝えてもらえれば、面会が叶うはずだと主張して譲らなかった。そこでスヴャトリフ情報庁長官はまたもプーチン大統領に電話をしたというわけなのだが――「竜崎という男のことなら何も心配ない。むしろ彼の言うことをよく聞くように」と言われただけだった。誰を見ても敵に思えるほど、疑心暗鬼になっていたスヴャトリフは、内心不安でならなかったが、それでも『ペンタグラム・プログラム』を作成した本人であるという男の存在を無視することはできなかったし、結局応接室に竜崎のことを通して、そこで四人のFBS特殊工作員に守られるような形で彼と密談することになった。
「顔色がよくありませんが、どうかなさったのですか?」
 型通りの挨拶をして、革張りのソファに身を沈めると、Lは応接室に入った時から感じていた物々しい雰囲気と、スヴャトリフ情報庁長官の顔色の優れなさに違和感を持ち――そんなふうにまずは軽く探りを入れた。
「まあ、わからなくもありませんけどね……オルフョーノフ政府副議長があのような亡くなり方をしたあとでは……次は自分の番かもしれないと、疑心暗鬼になるのも無理からぬことですし……」
 美人の秘書が持ってきた紅茶を、スパシーバと言って受けとり、Lはいつもの座り方のまま、ずずずっとまずは一口それを飲んだ。
 スヴャトリフとFSBの特殊工作員とは、正直いってそんな態度の竜崎という男に対して、どんな対応をとっていいのかがわからなかった。ソファの下に古びたスニーカーを置いて、裸足のままソファに座る、ジーパンにセーター姿というこの男――顔立ちの基本は東洋系ではあるが、生粋の東洋人と呼ぶには彼の風貌は少し奇妙であった。おそらくそれ以外の外国の血が混ざったハーフかクォーターなのだろうが、ここまで自分から怪しいと名乗って出られると、かえって怪しく感じられなくなってくるのがなんとも不思議な感じがした。
 とりあえず、情報庁の建物へ入る前にボディチェックは済ませてあるし、今の状況下で竜崎という男が何か危険な行為をしでかすとも思えない――そう判断したスヴャトリフは、ようやくその日初めて、少しだけ安心して、紅茶をゆっくりと味わって飲んだ。
(多分この男はアレだ……最初はこんな変な男があの<ペンタグラム・プログラム>をと思ったが、ようするに天才によくいる『頭が良すぎてちょっとおかしい』系の人間なのだろう……そう思えば、さして警戒する必要はないのかもしれない)
「その、大統領からもミスター竜崎の話は聞いています。国防省の情報管理担当者のほうからも先ほど連絡を受けました……して、今回わたしの元を訪問された目的というのは?」
「このピロシキ、美味しいですね」Lはもぐもぐと紅茶と一緒に何故かだされたピロシキをつまみながら言った。「このひき肉の柔かさ、パンの衣のパリッとした感じといい……なんとも言えません。やっぱりこれが本家本元っていうことなんでしょうか」
 FBSの特殊工作員たちが互いに不審そうに顔を見合わせ、スヴャトリフがどこか引きつった表情をしているのを見て、Lはすぐに本題に入ることにした――官僚系の人間には、常に二種類の人種がいるものだ。すなわち、冗談の通じる、ある程度融通のきく官僚と、冗談のまるで通じない官僚とが。彼らは明らかに後者だった。
「とこでひとつお聞きしたいのですが、コンピューター犯罪に関することの問いあわせは、当局で間違いないと解釈させていただいてよろしいんですよね?肝心な話のほうをさせていただいたあとで、それは当局の関知するところではないから、別の部署に……という感じでたらい回しにされるのは面倒なので、先に聞いておきたいのですが」
「ミスター竜崎の御用件が、もし『ペンタグラム・プログラム』に関することであれば、間違いなくわたしのほうで承らせていただきますよ」
 Lがぺろりと美味しそうにピロシキを平らげるのを見て、スヴャトリフは自分が随分腹を空かせているということにその時初めて気づいた。他の政府要人の来客であればともかく、目の前にいるのは髪ぼさぼさの奇妙なオタクのような男――スヴャトリフは愛人である秘書のイリーナが気を利かせて持ってきたのだろうピロシキを、Lの真似をするようにぺろりと平らげることにした。
「実は、オルフョーノフ政府副議長を爆殺したであろうテロリストの割りだしをわたしは大統領から直に依頼されておりまして……スヴャトリフ長官もご存じのとおり、国防省のデータバンクをハッキングするなんて、前もって相当の下準備をしていたとしか思えません。これだけでももう、ある程度犯人の絞りこみが可能だとすら言えますが、ここまで用意周到に事を運んだ犯人ですからね……もはや必要なデータを得た以上、アジトを変えている可能性もありますし、使用したパソコンはすべてデータを他に移して始末した可能性も考えられます。しかし、捜査というものは常に、慎重に足元から固めていくということがあくまでも基本ですから、まずは調べてもらいたいことがあるんです」
 そこまでLの話を聞いて、明らかに顔色を変えたのは、スヴャトリフ情報庁長官というよりも、FBSの護衛メンバーたちだった。大統領からテロリストの割りだしを直に依頼……そんなことは我々は何ひとつ聞かされていない、そう言いたげな顔つきだった。
「失礼ですが、スヴャトリフ長官」と、四人の男の中で、リーダーであるスモレンスキー大佐が口を開いた。「そういうことであるならば、その管轄は我々FBSの領域のものということになるかと思いますが……長官もご存じのとおり、我々FBSの仕事は国民の憲法上の権利を守ること……国家の機密情報を盗んだ不貞な輩がその国民の中に混ざっているならば、即刻排除せねばなりません」
(こいつら、FSO(連邦警護局)から派遣された職員でなく、FSB(連邦捜査局)のまわし者か……!)
 今回の捜査でLは、なるべくならば、FSBの人間の力を借りたくはなかった。何故なら捜査のヒントを与えて、自分よりも彼らのほうが先にテロリストの居場所を見つけた場合――秘密裏に拷問されて他のメンバーの顔や名前を吐かされた揚句、そのまま闇に葬られるということがこの国では十分に起きうるからだ。
「いや、まあしかし……それは大統領の意見も聞いてみないと……」
 FSBで中佐どまりの地位しか得ていなかったスヴャトリフは、エリート将校出身のスモレンスキーに、何故か逆らいがたいものを感じて活舌の悪い物言いになった。スモレンスキーは四十五歳のスヴャトリフよりもふたつ年下だったが、最近とみに中性脂肪の気になる彼よりもずっとスマートでハンサムでもあり、仮に相手がスヴャトリフでなくても威圧されるものを誰もが持ったことだろう。FBSの高級幹部スモレンスキーは、一種独特の冷徹な、逆らいがたい雰囲気を持つ、鋼を氷で固めたような顔つきの男だった。
「大統領に電話して、確認でもとりますか?」
 やれやれといった顔をして、Lは疲れ果てたように言った。以前から思っていたことではあるが、ロシアではすべてが非効率的で、実際のところ手際が悪すぎる。
「いえ、ミスター竜崎」と、スモレンスキーはこの先はわたしが、というように話の間に割って入った。「是非あなたのお話をお聞かせ願いたい……オルフョーノフ政府副議長暗殺以後、クレムリンはピリピリしています。この厳戒態勢が解かれるのは、テロリストの犯人が捕まることによってのみ……国防省のデータバンクの保護プログラムを作成したあなたから、その手がかりとなる情報をお教えいただけるとしたら、これは願ってもないことです」
 正直いってLは、スモレンスキーのことを第一印象と直感によって、(信用できない)と即座に決めつけた。
(この男のこの顔つき……まず間違いなくスパイの典型だな。顔色ひとつ変えずに人間を殺すタイプの男だ。ここはひとつ、情報を小出しにしていくことにするか)
「そうですね。いまさらわたしごときが申し上げるまでもないことかとは思いますが、国防省のデータバンクをハッキングしようと思ったら、それなりの準備が必要だということなんです。まず高性能ケーブルを二本くらい引いてるんじゃないでしょうかね……それとパソコンを複数所持している可能性が高い。モスクワ市内でこのふたつの条件を満たす一般住宅となると、極めて限られてくるんじゃないでしょうか。企業や会社関係のパソコンでは、まずすぐに足がつきますよ……これはあくまでもわたしの推測の領域をでないことではありますが、わたしにもし数十人動かせる捜査員が下にいるとしたら――まずは郊外の人目につかない、中流か中流以下の住宅をしらみ潰しに当たらせますね。何故なら相手はチェチェン系のテロリスト……おそらくは資金のあるなしに関わらず、つましい生活をしているはずです。チェチェンでは今、泥水を薄めたような水でお湯をわかして紅茶を飲み、空想上のパンやビスケットを食べている人が多いと聞きますからね……同胞のために戦っている彼らが、モスクワの中心部でそう贅沢な暮らしをしているとは考えにくい」
「な、なるほど……」
 親指をかじりながら、幼稚なポーズをとっている東洋系の男の話を聞きながら、スモレンスキーはもしかしたら自分の手でテロの実行犯を捕まえられるかもしれないと思い、内心色めきたっていた。FSBのメンバーには全員、そうした訓練がなされるものなのかどうかはわからないが――他の三人の特殊工作員たちも、顔の表情にはまるで出さないまでも、思いは自分の上司とまったく同じだった。
「ただし、そのテロリストが本当に国防省のデータバンクをハッキングしたのかどうかの最終的な確認は、わたしがとります。大統領にもそう言っておきます。何故なら、あなたたちが捕まえて、テロリストを拘束した場合――その中で実際にハッキングを行った人間が誰なのかが、わからなくなる可能性があるからです。わたしの言っている意味、わかりますよね?テロリストのアジトに踏みこんで、証拠となるパソコンなどの物品を押収……まずそこまではいいとしましょう。ですが、わたしの知りたいのは、どこの組織に属したなんという名前の人間がペンタグラム・プログラムを破ったかということなんです。アメリカなどでは時々あるんですよ……そういう専門の能力を持った人間が裏で雇われて、産業スパイと同じくこっそりデータを盗むということがね。その場合、そうしたハッカーは捕まらないことのほうが多いんです。雇い主のほうが裁判にかけられることはあっても、肝心のハッカーのほうは難を逃れることがいくらでもできますからね……連中に脅されて仕方なくやったとでもなんとでも言えば、いくらでも理由は成り立つ」
 おわかりですか?というように、Lは一同の顔を見回すと、最後に念を押すように、スモレンスキー大佐の冷たいアイスブルーの瞳をじっと見つめた。もうひとつ、こういうことがあっても困る――テロリストの内のひとりだけが捕まって、拷問の途中で死んだ場合、ハッカーが誰かわからなくなる可能性があることもお忘れなく、とでもいうように。
「では、わたしの用件のほうはすべて済みました」Lは踵の潰れた靴を突っかけると、立ち上がった。もはや長居は無用だった。「FSBのみなさんがどう動くのかはわたしにはわかりませんが、随時捜査状況を知らせるよう、大統領には頼んでおきます……なので、何かあった場合はすぐにこちらのほうへ連絡をよこしてください。では、よろしくお願いします」
 Lはワタリ宛ての連絡先の書かれたメモをスモレンスキーに渡すと、最後にスヴャトリフ情報庁長官がいたことを思いだして、彼に対して軽く会釈した。「美味しいピロシキごちそうさまでした」という挨拶とともに、応接室を出ていく。
(FSBはこういうことにかけてだけは、恐ろしく手際がいいからな……見つかるとすれば、一週間とかからず容疑者が挙がるに違いない。もし手間どるようであれば――それは向こうのほうが一枚上手だったということだ。問題なのは、彼らがテロリストを捕まえた場合、わたしに内緒で非合法な措置をとらないかということ……なんだかこうなってくると、アメリカが何やら恋しいな。アメリカにはアメリカの、いかにもアメリカらしい問題はあるが、ロシア式の疑わしきは罰せよという悪しき体質はない……FBIだって、よほどのことでもなければ捜査状況をわたしに隠したりはしない……)
 そんなことを思いながらLは、待たせておいたタクシーに乗りこみ、モスクワ川沿いにある高級ホテルへ戻ることにした。モスクワではタクシーの乗車拒否が多く、なかなか捕まらないこともザラだというが、料金をボラれることを覚悟しているのなら、話は別である。Lはいやらしい成金よろしく、前金として一万ルーブル運転手に渡し、自分が戻ってくるまで待っていてくれたら、もう一万ルーブル渡そうと約束していたのだった。
「やっぱり日本人は金持ちだなあ」などとそのタクシー運転手はLのことを勝手に日本人と決めつけてかかっていたようだった。一体どこから来たのかと聞きもしないうちから。そして上機嫌にこう忠告してくれた。「モスクワはニューヨークほどではないにしても、治安が悪いからさあ、気ィつけなよ、あんた。日本人ってだけで強盗に襲われたんじゃ、あんただって間尺に合わないだろ?」
「はあ、まあそうですね……」
 Lは曖昧にぼんやりそう相槌を打ちながら、世間話の好きなタクシー運転手というのは万国共通で似たような雰囲気を醸しだしているのは何故なのだろうと思った。そのあとも、今日稼いだお金で、孫のためにおもちゃを買ってやるだの、物価が高いだのなんだの――Lにとってはどうでもいい話が続いた。ただ最後にひとつだけ、重要な情報があった。それは彼が「こんなに金をもらったのは、運転手をはじめて以来、二回目のことだね。以前、アラブ系の男をホテルまで送ったことがあるんだが、物凄い金持ちらしくて、ほんの目と鼻の先の距離を乗せてやっただけなのに、現金でぽーんと一万ルーブル。ありゃ石油王かなんかだったんだろうな、きっと」
「アラブ系……」Lは親指の爪を唇に立てながら、そう呟いた。この際それがどこの誰かということはとりあえず置いておく。ただ何かのヒントになりそうな予感がした。「その人、どこからどこまで乗ったんですか?」
「えーっと、あれは確か……どこだったかな。クレムリンからロシア・ホテル……いや、違うな。メトロポール・ホテルまでだった。うん、間違いないよ。やたらロシア語のうまい男でさあ。そういやあんたも日本人なのに流暢なロシア語だよな。その男はサウジアラビアからきたとか言ってたけど」
「……それは一体、いつ頃の話ですか?」嫌な予感に胸を鷲掴みにされながら、Lはタクシー運転手の答えを待った。
「そうだな。かれこれ五、六年前になるかな。それがどうかしたかい?」
 車はすでに、ボリショイ・カーメンヌイ橋を越えて、宮殿のような外装のホテル前に到着している。だがLには、タクシーから降りる前にまだ運転手に聞いておきたいことがあった。
「申し訳ありませんが、正確に思いだしていただけませんか?五年前なのか、六年前なのか……」
「えーっと、あれは確か……エリツィンがあんたんとこの首相と会って、核ミサイルの照準から日本を外すって言った年だよ。こう見えても俺はめっぽう政治に強いほうでね、特に経済のことに関しては日本に興味があるからさ……
「五年前、ということは1997年。日本の首相が橋本龍太郎だった時のことですね」
「そうそう、ハシモト、ハシモト。そんな名前だった」
 Lは何度もスパシーバと繰り返しながら、白い顎髭の初老のタクシー運転手に、五万ルーブル渡した。彼はまるで不正な金でも掴まされたというように、「一万ルーブルの約束だったんだから」と言って、四万ルーブル返してよこそうとしたが、Lはほとんど無理矢理にそれを運転手に押しつけた。
「お孫さんにおもちゃを買って、政府に高い税金でも支払ってください。あなたにはわからないかもしれませんが、とても重要なことにわたしはたった今気づいたんです」
 そうなのだ――それもとても恐ろしい可能性に気づいてしまった。サイード・アルアディンとロシア政府は実は繋がっていて、『灰色のオオカミ』は彼にとってただの捨て駒に過ぎないかもしれないということ……そのことに、どうして今まで自分は気づこうともしなかったのか。

 
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【2007/11/16 07:54 】
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