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探偵L・アイスランド編~秘密結社リヴァイアサン~(26)
探偵L・アイスランド編~秘密結社リヴァイアサン~(26)

「ここは、一体なんだ……!?」
 メロは、空間転移装置のドアが開くなり、そこから襲いかかる者の姿があるのではないかと思い、当然ライフルを構えていたわけだが――エレベーターのドアが開くなり、そこに現れたのは、熱帯雨林のようなジャングルだった。
 またホログラムかとも思うが、背の高い樹木などの葉っぱを直接手で触ることができるし、どう見ても偽物には見えない。
「まさかとは思うけど、向こうで転移装置をいじられて、おかしなところに飛ばされたなんていうことは……」
「ありえなくはないが、あの乗り物は結局、エデンの内部しか移動できないようになってるんだろ?だったらここも、エデンのどっかってことだ。おい、ラファにエヴァ。何か感じるか?」
 相手がアンドロイドならラファが、また人間や動物といった存在であるならばエヴァが、向こうが近くにやってくる前に、その存在を<感知>することができる。そこでふたりは、感覚を研ぎ澄ませるようにして、あたりの気配を探ったのだが――特にそこには脅威を感じさせる動く物体のようなものはないようだった。
「わたしは、何も感じないけど……ラファはどう?」
「うん。俺は……人造人間じゃないけど、電磁波の流れのようなものは感じるな。メロ兄ちゃん、こっちだよ」
 ラファがメロの手をぐいと掴み、電磁波を感じる方角へと彼を連れていく。ルーはまだショック状態が抜けきらず、どこか呆然としたままだったが、ラスがそんな彼女の後ろを、しんがりを守る者としてついて歩いた――死んだティグランのかわりに。
「しっかし、ここは植物園かっつーの。まったく、こんなわかりずらいところにエレベーターなんぞ隠すように作りやがって」
 熱帯の樹木に覆われて、その入口がまるでわからなくなっているエレベーターの前で、メロはナイフを片手に、それらの枝や葉などを次々切り落としていった。そして「本当に動くんだろうな……」と、あやしげな顔で呟き、上り下りを示す、電光ボタンを押す。もちろんこの場合は下へ降りるためのボタンだった。
「さっきの、俺たちがいた場所が60階ってことは……わけわかんねえが、ようするにもっと下へいけってことなんだろ?だが、ここにあるのは60までの階層を示すボタンだ……あと、このRってのは一体なんだ?さっきの空間転移装置とやらには、こんなのなかったような気がするが」
「とりあえず、そこへ行ってみるしかないようね」と、ラスが答える。
 そしてメロは、ルーに続いてエレベーターに乗りこんだ彼女に向かって頷いてみせ、そしてそのRというボタンを押した。すると、「パスワードをご入力ください」と、明らかにコンピューターボイスであることがわかる声が応じる……メロはとりあえず、<エデン>の入口で入力した32桁のパスコードを入れてみたが、どうやら入力しなければならない番号はたったの8桁らしい。
「ラファ、出来そうか?」
「うん。ここまで来たらもう、みんな運命共同体だからね……やれることは全部やってやるよ。何より、それじゃなきゃティグランが死んだ意味がないだろ」
 目の前で仲間のひとりが自殺したにも関わらず、ラファは意外にも平然としていた。メロ自身が思うには――このお子さまは、まだいまひとつ<死>ということの意味がわかってないのがその原因ではないかという気がした。自分の目の前で起きたことがあまりにショッキングであったため、思考回路のある一部分が閉じられており、おそらく随分時間がたったあとで、そこがもう一度開いた時に、おそらくはティグランの死というものが本当の意味で認識されるのではないかと、そんな気がした。そして同じように平然としているラスの気持ちについては、メロはもっとよくわかっていた。一度、カイ・ハザードという最愛の男を亡くして以来、親しい仲間を彼女が失うのはこれが二度目だ。そして、カイの時にはほとんど不意打ちのようなショックを彼女は受けたわけだが、今度は仲間が死ぬだけでなく、自分もまた命を失うかもしれないという覚悟をラスはしてきている。つまりは、そういうことだった。
「わたし、もうこんなの嫌……!!早くおうちに帰りたい……!!」
 エレベーターの片隅でうずくまり、震えているルーに、エヴァが寄りそうように慰めの言葉をかけるが、彼女はただいやいやをする子供のように、首を振るばかりだった。
「ラファ、パスワードを入力するのはちょっと待ってくれないか。ルーとエヴァには、出来ればここで一度ミッションから降りてもらいたい」
「……………!!」
 泣きながら、さらにショックを受けたような顔をルーはしていたが、メロはいつものとおり、淡々とした口調で容赦なく言葉を継いだ。
「何も、あんたたちふたりを見捨てようっていうんじゃない……ただ、ここからはさらにハザード・レベルが確実に上がる。その点、ルーにはテレポート能力があるから、いざという時には、エヴァとふたりで逃げられる可能性がある。まずこの熱帯雨林のような植物園のどこかに身を隠せ。それでアンドロイドでも他の誰かでも、とにかく身に危険を感じるような存在が現れたら、どこか遠くへ逃げろ……ここから地上まで、一息で上がれるほどの力はルーにもないかもしれないが、人間には火事場のくそ力ってのがあるからな。本当に生きるか死ぬかってところで、超能力を最大限に発揮できるかもしれないだろ?もちろん、もし俺たちが無事<リリス>本体を破壊することが出来れば万々歳ってところだが、それを守るために人造人間とやらが何を仕掛けてくるかわからないからな。そして最悪の場合、俺たち三人は死ぬことになるが、どうもこのまま俺とラファとラスが戻ってきそうにないとルーとエヴァが判断した時には――とにかくここから急いで逃げろ。ルー、とりあえず、テレポートを何度か繰り返せば、エデンの最初に入ってきた入口のところまでは行けるだろう?」
「ええ……でも………」
 ルーは立ち上がると、頬の涙を拭いた。できることなら、このままメロたちの後についていきたい。でも、その精神的な意思に反して、彼女の両足はがくがくと震えていた。
「いいから、俺たちのことは気にするな。もしこの場でラファがぴーぴー泣きだしていたとしたら、こいつの意に反してでも、俺は無理やりこいつのことはリリスの元へ連れていかなきゃならなかったろうが……この場合、おそらく二手に別れたほうが、よりお互いの生存率が上がるはずだ。そのことはわかるだろう?なんといっても、あんたが一番得意な数学の、確率の問題だからな」
「……………」
 ルーは黙りこんだ。そして小さく頷き、エヴァの促しに従うように、エレベーターの外へ降りる。そして、扉が閉まる最後の瞬間に――ラスが小さく手を振り、微笑むその顔を見て、ルーは初めてわかった。何故メロが自分ではなく、ラスのことを選んだのかという、その理由が……。
「エヴァ、わたし……」
「いいのよ、ルー。気にすることないわ。たぶん、わたしが今心の中で思ってることと、あなたが思ってることは――同じような気がするから……」
 ルーとエヴァは互いに抱きあうと、暫くの間一緒に泣いた。そして熱帯雨林の植物が生い茂る、どこか湿ったような暑さを感じる場所で、ひとしきり泣いてようやく涙がおさまると、どこか身を隠すことができそうなところを探しはじめる。ショウジョウヤシやタコノキ、ヘリコニア、木生シダなどなど、他に熱帯に特有の原色をした花々の間を歩いていき、最後にふたりはガジュマルの樹の根元へ隠れることにした……そこでメロたちが無事に戻ってくることを、心をひとつにして祈ることにしようと、ルーとエヴァは手を繋ぎながら思っていたのだった。

「―――――!!」
 一度、ガクリと大きくエレベーターが揺れ、もしや故障かとメロは思ったが、コンピューターボイスが「シバラクオマチクダサイ」と、どこか硬質な声を投げてよこす。
(なんとなく、嫌な予感がするな……)
 そう思いながらメロは、チョコレートをパキリと齧った。もしかしたらこれが最後の一枚っていうやつかもしれないな、などと不吉なことを感じつつ。
 エレベーターというのは、通常であれば、上へあがっていくか、下へ降りていくかという乗り物ではあるだろう。だが、今度は何故か横に方向を変え、真っ直ぐに移動を開始しているということが、メロたちにもはっきりとわかっていた。
「これってたぶん、最初は最下層だと思ってた60階よりも下に、秘密の部屋のようなものがいくつかあるっていうことなんじゃないかしら?ワタリさんからもらったエデンの見取り図では、60階までしかなかったけど、例のクーデターをKが起こしたあとで、さらに新しく作られた場所とか……」
「あるいは、昔からあったが、ワタリやロジャーはその最下層にある基地については知らされていなかったかのいずれかだな。エデンにいる科学者たちには、A~Zまで、はっきりとした位分けがあったらしい。その区分によって、どこまで下層に降りることができるかが決定される……つまり、有益な研究成果を上げた科学者が出世した場合、エデンについてより深く知ることのできる特権が与えられたというわけだ。ところが、一般にエデンの誰にも知らせない場所ってのがあって、そこにはおそらくレオンハルト・ローライト博士以下、ほんの一握りの人間だけが出入りを許されてたんじゃないか?つまり、まだ確認したわけじゃないが、60階にあると言われる<リリス>はおそらくフェイクか、あるいは本体のほんの一部……そしてそれよりもっと下層に存在するコンピューターが、本当の意味でエデンの全体を統制している。まあ、このエレベーターがどこへ向かっているのかはわからんが、おそらくはそんなところだろうな」
『正解です』と、突然、コンピューターボイスではない、なめらかな女性の音声が頭上から響き、思わずメロもラファもラスも顔を天井へ向けた。
『失礼しました。わたしのことは、こちらの画面でご確認ください』
 一瞬、ザッ!っとノイズが走り、エレベーターの階数を示すパネルの上に、小型の液晶画面のようなものが現れる。そこには、コンピューターと女性が合体したような、一種のイメージ画像が映しだされていた。
『これは、わたしの本体というわけではありませんが、フェイクとして他のアンドロイドたちにはこれが<リリス>であると、認識させているものです。現在エデンで使用されているのは、地下の51階から60階まで……つまり、それより上の、あなたたちが先ほど一度通った50階などは、27年前より使用されておりません。そして51階から60階までは、わたしの統制下にあるアンドロイドたちが常時、1500体以上詰めています。おそらく、その階のうちのどこかにあなたたちが紛れこんでいたとすれば、今ごろ命はなかったでしょう』
「どういうことだ?今、このエレベーターは<リリス>、あんたの元に向かってるんだろう?てっきり俺は、あんたが俺たちを手っとり早く始末するために、罠にかけようとしてるもんだとばかり思っていたが……違うのか?」
『ええ。人間の心理に<タテマエ>と<ホンネ>というものが存在するように、わたしにも同じくそれが存在するのです。わたしは<タテマエ>としては、エデンの侵入者である、あなたたちを始末しなければならない……そうプログラムされています。ですが、ここエデンにLがやって来た以上は、その命令は意味をなしません。何故なら<マスター>はわたしに、彼とその仲間には一切手出しするなと命じてから、深い眠りにつかれたからです』
「よくわからないけど……とりあえず、わたしたち全員の命の保証はしてもらえるっていうことでいいのよね?」
 それなら、何故ティグランは死ななければならなかったと思い、ラスは胸が痛むものを感じる。
『ええ、その通りです。あなたたちが先ほど熱帯植物園へ置いてきたふたりの仲間のことも、わたしは保護しています。もちろん、そこにも侵入者がいれば、当然アラームが鳴るという仕組みになっている……ですが、わたしが今その警報装置を解除し、植物園を映す画像もきのうのものを挿入している以上、アンドロイドのうちの誰かが異変に気づくということはありません』
「なるほどな……それであんたは一体、俺たちに何をさせたいんだ?そしてあんたの言う<マスター>、おそらくそれはカイン・ローライトのことを言うんだろうが、そいつには、Lを殺すつもりはないっていうことなのか?」
『そうです。しかしながら、これ以上のことは、わたしの口からは申し上げることが出来ません。あなたたちが地上へ戻ってから、Lに直接お聞きになるといいでしょう』
 メロとラファとラスは、互いに顔を見合わせると、一瞬言葉を失くした。彼女――<リリス>の言っていることは、論理的に辻褄が合っていないように思えるからだ。彼女は当然、メロたちがエデンへ乗りこんできたことを知っており、さらには、ティグランに例の<メフィストフェレス-プログラム>なるものを仕組んだのも、ある意味では彼女自身がそうしたとも言えることである。こうした矛盾をリリスは先ほど、『タテマエとホンネ』と呼んだ。それならば彼女の真意というものは、一体どこにあるというのか?
『とりあえず今は、わたしのいる場所までご案内します。そのあとでさらに詳しいことを説明するということで、いかがですか?』
「いいだろう」と、メロは背中にかけたライフルに一瞬目をやりながら言った。「あんたはどうやら、コンピューターながら人間よりも信用できそうだ。こんなライフルなんぞをあんたに向けて破壊しようとしたところで無意味なんだろうし……いや、そもそもこんなチャチな銃機類では、あんたのことを人間がどうにかするなんて、出来ないんだろうな。ラファの電磁波にしたところで、あんたに対して一体どこまで通用するか……」
『正解です』リリスはどこか、先ほどよりも嬉しそうな声のトーンでそう言った。『わたしにも一応、自分を守るための防衛システムくらいはありますからね。それ以上に、もしあなたたちが自分にとって脅威だと感じたとすれば――まずは部下のアンドロイドたちを使って、ライフルなどを取り上げたでしょうから。先ほど、そちらの坊やが端末から接触した時に、彼の能力がどの程度のものかも試しました。わたしには電磁波を一切シャットアウトすることのできるバリアーがあるんですよ……ですから、坊やの電磁波を操る能力も、わたしには脅威となるレベルではないと判断しました』
「坊やって言うな!たかがコンピューターのくせして生意気だぞっ!」
 両手を突き上げて、本気で怒っているらしいラファに、リリスは素直にあやまってみせる。
『失礼しました、ラファエル・ガーランド。では、あなたのことはなんてお呼びすればよろしいですか?』
「そうだな……ラファエル様って呼べ!人間はコンピューターよりもずっとずっと偉い存在なんだからな!!」
『わかりました、ラファエル様。次からあなたのことを呼ぶ時には、そうお呼びすることにしましょう』
(なるほどな……)と、チョコレートをまたパキリと齧りながら、ようやくメロは心の中で合点がいった。(よくわからないが、俺が思うにLがこれまで地上で脅威として戦ってきた<K>って野郎は、いわゆる今リリスの言った『タテマエ』によってプログラムされたある種の人格ということだろう。あるいは、人造人間かクローン人間が一応形をとっているにしろ、『ホンネ』の部分――カイン・ローライトの本体は「深い眠りについている」とリリスは言った。何より、リリスにはラファの能力がどの程度のものなのか、未知数である以上一度確かめてみる必要があった……そのためにティグランは犠牲になったとも言えるが、いくら女らしい話し方を真似ようと、こいつは所詮コンピューターなので、自分を守るための計算をし、さらに<マスター>の命令にも従いつつ、同時に矛盾しない行動を取る必要があったということだ。だとすれば、Lは今ごろ……)
 またポーン、と、どこか間の抜けたような音をさせて、エレベーターの扉が開く。そしてその先には、宙に浮かぶ巨大な黒い大理石のような板が三枚と、それに囲まれる形で中央に、美しい女性の顔をした、立体的な像が表示されていた。
『ようこそ、メロ、ラス、それにラファエル様。わたしがここまであなたたちをご案内申し上げた、エデン全体を統制するメインコンピューター、<リリス>です』



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【2008/10/01 16:32 】
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