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探偵L・アイスランド編~秘密結社リヴァイアサン~(23)
探偵L・アイスランド編~秘密結社リヴァイアサン~(23)

「ティグラン―――ッ!!」
 ルーが悲鳴に近い声を上げて、自分の頭を銃で撃ち抜いた幼馴染みのそばへと走り寄る。彼は、痛々しくも、両方の目を見開いたままで絶命していた。
「ティグランっ、どうしてこんなことに……っ!!
 どうして、どうしてと繰り返し呟くルーに代わって、エヴァがそっとティグランの瞳を手で閉じさせた。いくらヒーリング能力があるとはいえ、それは生命活動を停止させた者をも生き返らせるほど、強いものではない。それに、もともとエヴァには癒せる者と癒せない者、そして癒せる傷と癒せない傷とが存在するのだ。たとえば、その病いによって死亡することが運命的に確定している者のことは、彼女の手によっても救うことは出来ない。
そしてそうとわかっていながらも、エヴァはティグランのことを自分の超能力で癒そうとした。そのことで、彼の頭蓋を貫いた傷口は修復されはしたものの、ティグランは目を覚まさない。エヴァは見えない目に涙を流しながら、幼い頃よりの自分の仲間の魂が、その体を離れていったことを認めないわけにはいかなかった。
「ラファ、いいから<リリス>と交信しろ!」
 予想外の「メフィスト」の行動に驚いたガブリエル♯2026は、一瞬呆然としていた。だが、その隙を逃さず、メロは彼女のことを容赦なく殴りつけ、さらに銃身で頭部を打ち据えると、彼女は呆気なく意識を失ったようだった。
 ラスにガブリエルを見張るように言い、メロはラファがサブシステムコンピューターに侵入するのを後ろからじっと見守った。彼の頭の中では今、ふたつの思考が同時進行している……まずひとつ目、<メフィスト>とかいう別の人格に乗っとられたティグランは、おそらく最後の力を振り絞って唯一の抵抗を試みたのだということ。そしてふたつ目が、その彼の命を無駄にすることは出来ないということだった。ティグランが自分の命を犠牲にすることで、今わずかながらの<時間>が与えられたのだ。ここの様子は監視されているか、あるいはされていないにせよ、このガブリエルというアンドロイドがいつまでも戻らなければ、別の「誰か」がやって来るであろうとことは間違いない。
 例のルシフェル・ナンバーという銃火器類が一切通用しない連中が、人海戦術とばかり、この場所へ押し寄せた場合――いくら電磁波が操れたにしても、ラファひとりしかその超能力を使えない以上、限りがあるというものだ。だが、もしここでラファがエデンのメインコンピューターである<リリス>を壊滅させることが出来れば……それが唯一の勝機と呼べるものだろうと、メロはそう判断していた。
「ダメだよ、メロ兄ちゃん。流石に情報の容量が大きすぎる。このままいくと、俺のほうが向こうに<飲み込まれる>感じだ……でも、向こうがこっちに「来い」って言ってるのはわかる。いや、「おいで」かな。なんにしても、結局ここからじゃ埒があかないよ。どっちにしても<リリス>本体のある場所まで行かないと……」
「くそっ!!」
 バシッ!と銀行のATM機に似た機械に拳を叩きつけ、メロは今度は部屋の片隅に目をやった。先ほど、このガブリエル・ナンバーと思われるアンドロイドは、何もない空間から突如として現れた。だが、その近辺をあちこち探ってみても、それらしきものを発見することは出来ない。
「おい、この売女!!起きやがれ!」
 単純に造形美ということで言うなら、絶世の美女といえるガブリエルに対して、メロの扱いは極めてぞんざいだった。顔を何度もはたき、彼女が目を覚ますと、その胸ぐらを掴み上げる。
「死にたくなかったら、正直に答えるんだな」と、メロはおそろしく歪んだ形相で、ガブリエルに対してすごむ。そしてラスがすかさず、彼女の頭にマシンガンを突きつけた。「さっき、あんたはどうやってここへ来た?もし答えなきゃ、まずは手の指を一本一本へし折ってやる」
「……………!!」
(こんなに邪悪な人間の顔は見たことがない)と思うのと同時に、ガブリエル♯2026には、メロが本気であるということがよくわかっていた。それで、震える指で、ラファがいまなお何かを操作しているサブシステムコンピューターを差し示す。
「そこのコンピューターに、空間転移装置のマニュアルが載っているはずです。それを使用すれば、エデン内部なら、どこへでも移動が可能……」
 ガブリエルが言い終わるか言い終わらないかのところで、彼女はまた気を失った。メロが容赦なくガブリエルの鳩尾に、パンチを決めてよこしたからである。
「よし、ラファ。空間転移装置とやらのマニュアルを呼びだせ。それで<リリス>のある場所まで、すぐに移動する」
「うん……でもなんか、おかしいんだよ。俺たちが<リリス>を破壊しにきたことは、向こうにもすでに察知されてる。にも関わらず、向こうは俺たちに来てほしがってるんだ」
「なんだそりゃ?ただの罠なんじゃないのか?」
 ラファが『空間転移装置』を起動し、エレベーターに似た箱型の乗り物が現れると、メロはラスとエヴァとルーをそこに乗せた。そして最後にラファのことも乗せ、自分も乗りこむ……だが、扉が閉まろうという瞬間に、目を覚ましたガブリエル♯2026がサブコンピューターに向かいかけたのを見て――間一髪、ドアが閉まるその一瞬前に、メロは<彼女>の頭蓋に狙いをつけて撃った。そして言った。
「これは、ティグランの仇だ」

 メロはこの『空間転移装置』とやらが、どういうシステムで稼動しているのかには、まるで興味がなかった。ただ、通常のエレベーターと同じように60階分の階数のボタンが示されているのを見て――迷わず60のボタンを押す。だが、『転移装置』というくらいだから、ルーの瞬間移動並みの早さで目的地に到着するだろうと思いきや、意外にも時間がかかっていた。もしや装置の故障かとも思ったが、頭上にある電光表示を見ると、確かに53、54、55……と移動を開始していることがわかる。
 それで一瞬ホッとするが、到着した途端にアンドロイドどもに取り囲まれるという最悪の事態を想定し、気を緩めることは出来ないと再び自戒した。
「ティグラン……ティグランが……っ!!」
 なおもショックから立ち直れずにいるルーのことを、エヴァが慰めようとするが、ラスは涙もなく、ただひたすら無言だった。そしてそういう彼女の様子を見て、メロは自分が彼女を好きなのは、おそらくこういうところなのだろうと、パキリ、とチョコレートを齧りながら思っていた。



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【2008/10/01 16:07 】
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