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探偵L・アイスランド編~秘密結社リヴァイアサン~(14)
 探偵L・アイスランド編~秘密結社リヴァイアサン~(14)

「L、どうやらラケルとボーの奴が買い物へ出たらしいから、みんなを一度ニアの部屋へ集めるが……それでいいか?」
「ええ。よろしくお願いします」
 メロからの携帯電話の連絡に応え、Lは壁と床が自然発光している、窓のない白い部屋から出た。一見してみてここは、どこまでも奥行きのある広い部屋のように見えるが、それはただの視覚トリックで、実際には十畳ほどの室内にパソコンが一台とあとは目に見えない形で壁にモニターがいくつも内蔵されているだけだった。
<エデン>で建築家としてもっとも先端をいっていたヘルベルト・シュトラッセは、ホログラムを用いて狭い室内を広く見せたり、あるいは壁一面に世界の有名な建築物の内部を映しだすことで――まるでリアルにその場所(たとえば、スペインのアルハンブラ宮殿やフランスのヴェルサイユ宮殿、ローマのシスティーナ礼拝堂などなど)にいるかのように見せることに成功していた。Lが秘密基地のようにしているこの場所も、そのように見せかけることは可能な装置が内蔵されてはいるのだが、Lは世界のうちのどんな名所も映しだそうという気にはなれなかった。
(まあ、もしラケルがいたとすれば……彼女が「わあ、すごーい!」だのという反応を見るのは楽しいんですけどね。仕事をしている分には、他に何もない空間のほうがわたしは落ち着きます)
 そしてこの場所を、一面星の輝くプラネタリウムのように変えることも出来るのだが、前に一度、奈落の底に落ちていくような闇一色の世界をLは経験したことがある。それは単に、星が瞬きはじめるまで数秒の時間を要したという程度のことではあったのだが、その数秒がまるで永遠のようにも長く感じられ、珍しくもLはあやうくパニックに陥るところだった。
(あの時にわたしが経験した、まるで永遠にも感じられるような闇……それがもしかしたら<死ぬ>ということなのかもしれません。そしてその後に眩く星が輝きはじめる……それがもし本当に死ぬということなら、もしかしたらそれほど怖れることでもないのかもしれませんが……)
 Lがふとそんなことを思いながら、隠し扉を開いて外へ出ると、そこには何故かラファエルがいた。
(いつの間に……)
 モニターのセンサーの故障だろうかとLは一瞬訝しく思うが、ラファエルが手にゲーテの『ファウスト』を持って、何かを点検するようにバラバラとページを捲っている。
「この本を引いたら、そっちの隠し部屋に通じるようになってるんだろ?なのに、なんで俺が同じことしても、ドアが開かないんだ?」
「ああ、それはわたしの指紋にのみしか反応しないようになってるからですよ。所定の場所にその本を収めることとわたしの指紋、その両方が必要なんです……それより、どうやってこの部屋に入ってきました?」
「べつに。いつもどおりドアを開けて入ったってだけだ」
「……………」
 侵入者がいれば、それが誰であれ、センサーが感知して隠し部屋のモニターに映しだされるシステムになっている。コンピューターの誤作動ということも可能性としてゼロではないにしても……何かがおかしいと、Lはそう感じた。
「あなたの超能力は確か……電磁波を操ることでしたよね?」
「ああ。だからメロにもニアにもセスにも、毛嫌いされてんだ。俺がそばにいくと、機械の調子がおかしくなるって言われてさ。そんなの、べつに俺が意識してやってるってわけでもないのに、人のせいにされたって困るよ」
「ちなみに、あなたがこれまでにこの部屋に入ったことは何回くらいありますか?」
「そうだな。気が向いた時に時々、かな。ボーやラケルがこの部屋にスイーツを運んでくるだろ?だからそういう時にお菓子をちょっとくすねたり……なんだ、もしかしてビスケットが減ってるとか、マドレーヌが少ないとか、全然気づいてなかったのか?」
「……………!!」
 これは、Lにとってかなりショックなことだといえた。ボーやラケルが入室した時には、壁に埋めこまれたセンサーが反応して、必ずモニターにその姿が映しだされることになっている。だが、もしラファの姿のみコンピューターに感知されていなかったとすれば……。
「あなたは、鳥寄せも得意でしたよね?」
「ああ。なんか知らないけど、向こうが勝手に寄ってくるんだ。なんだっけ?渡り鳥は地球の磁場を感知して、渡りの方位とか位置を把握してるんだろ?渡り鳥じゃなくても、鳩とか雀とかさ、公園でもやたらくっついてくるよ。今度、庭で鳥がいっぱいやってくるとこ、見せてやろうか?」
「……ええ、是非」
 そうなのだ。確かにラファエルの超能力のことを聞いて以来、もしかしたら使えるかもしれないとは、L自身思ってはいた。だが、相手がまたほんの十歳の子供であることを思うと――エデンに連れていくのは忍びないと感じていたのも本当のことだ。
(だがもし、勝機があるとすれば……)
「なんだ、どーかしたのか、L?」
 自分のことを信頼しきっているように見上げる、性格はともかくとしても、容姿のほうは天使のように可愛い少年のことを見て――Lは(やはり出来ない)と首を振った。それは<K>のやり方であって、自分のやり方ではない……そうも思う。
「いえ、なんでもありません。とりあえずはまあ、あなたも大切なこの城の一員ですから、一緒に会議に参加しませんか?」
「……会議?一体なんだそりゃ?」
 おそらく、メロとニアは城のどこをほっつき歩いているかわからないラファのことは、会議のメンバーから外してもまったく支障なしと判断していたのだろう。自分にしても、ニアの部屋に彼の姿がなかったとしても、大して気に留めなかったに違いない。だが、彼が一緒にエデンへ来てくれるかどうかで、計画のすべてが変わってしまうという可能性があるのも事実だった。
「なあ、俺あれから足の指でスパゲッティ食べる練習してるんだけど、なかなかうまくいかないんだ。Lみたいにうまくなるには、あと何年くらい修行を積めばいいと思う?」
「そうですね……まあ、サッカー選手が試合中に手を使わないように、なるべくなんでも足でやるようにしたらいいですよ。こんなことを言ったら、またラケルに「子供に変なこと教えないで!」とか言われて、叱られそうですが」
「ふーん。なんでも足でか。なるほどな」
 ――以前、セスがみんなの前で手品の腕前を披露した時に、たまたまその場に居合わせてしまい、「Lも何かできるか?」と聞かれたことがある。それで「足の指でフォークを使い、スパゲッティを食べることくらいなら」と半分冗談で答えると、早速その日の夜にスパゲッティが茹でられ、余興としてそれをやらされたというわけだ。
「でも、イチゴクリームスパゲッティより、やっぱりショートケーキのほうがいいですよ、わたしは……」
「なんか言ったか、L?」
 廊下を先に歩いているラファが、くりっと振り返る。彼はこの時もLの物真似をして、ポケットに手を突っこみ、さらには極度の猫背だったが――Lはそのことを特に注意しようとは思わなかった。こうしたことは子供の成長における一過性の出来事であり、そのうち飽きてしなくなると思っていたし、足の指にフォークを挟み、スパゲッティを食べるなどという馬鹿な真似も……おそらくはそのうち興味がなくなるだろうと思っていた。
 だが、天才というのは、凡人の子供とは違うということを、彼らしくもなくLはこの時失念していたらしい。ラファはその後、猫背では歩かなくなったものの、やはり歩く時はずっとポケットに手を入れていたし、甘いものを好み、足に挟んだフォークでスパゲッティを食べるという技もマスターするようになるのである。



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【2008/09/25 06:44 】
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