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探偵L・アイスランド編~秘密結社リヴァイアサン~(12)
 探偵L・アイスランド編~秘密結社リヴァイアサン~(12)

 Lがジョアン公妃のヨット転覆事故の件を追っている間、メロはロンドンの麻薬捜査網の見取り図を大体のところ完成させていた。いや、ロンドンだけではなく――世界中の主要都市の麻薬の流れに関する地図が、メロとニアの手によって完成しつつあったといってよかっただろう。もちろんこの地図の作成元となった情報は、<殺し屋ギルド>の影の総帥といっていい、セス・グランティスからもたらされたものであり、彼の協力がなければ、ここまでの細かな麻薬資金の流れというものは、<L>にさえもわからないままだったに違いない。
(まあ、唯一問題があったとすれば、だ)と、メロは考える。(あのセスって野郎からはいけ好かない匂いをプンプン感じるってことではあるが……まあ、仕方ない。世界の正義のためには、そのくらいの感情的犠牲はやむなしってところだろうからな)
 剥き出しの石壁に沿って置かれた簡易ベッド、それにアンティークなライティング・デスクの上にある一台のパソコン――メロの部屋にあるのは、たったのそれだけだった。この城の作り主は、建設途中で自殺したとかで、まるで牢屋のように打ち捨てられたような部屋がいくつもあるのだ。ラケルは、メロにもティグランにも、そんなに離れた場所じゃなく、もう少しリビングに近い部屋に住むよう何度も言ったが、「人が集まる場所からは遠く離れていたい」というのが、メロのほとんど生まれながらに持った性格だった。
(ティグランの奴は、俺と同意見ってわけでもないんだろうが、同じ階に住んでるんだよな……)
 スコットランドヤードと連携して、大きな麻薬取引の現場を押さえるという事件を解決したあと、メロは依頼がない限りは麻薬の<手入れ>といったものとは直接関係していなかった。世界中の麻薬流通の大きな流れがわかった以上は、あとは必要に応じて戦争やテロの資金とされている場合についてのみ、そこの摘発がもっとも最優先されると考えていたのである。またこの場合、<L>のようにアフリカや中東、南米の警察機関の人間を『盾』として使う必要があったわけだが、困ったことには、メロ自身は盾なしにまずは自分が動きたいと思う気持ちが強かった。
(ニアならば、やはり信頼できる人間をコンピューターで選出し、さらにロジャーの心理分析にかけた上で『盾』を選ぶんだろうが……俺はより<L>に近いだろうその手法よりも、自分自身で動くことのほうが性にあってるんだよな)
 メロ自身は決して、アドレナリン中毒者というわけではなかったが、それでも自分がまず現場へ赴き、そこの警察機関の人間と(自分の身分は明かさないまでも)命の危険をともにするほどの覚悟がなければ――やはりそれはどこか<嘘>ではないかという気がしていた。これは特に<L>が活動をはじめた初期の頃にICPOを筆頭に各国の警察機関から批判を浴びたことではあるが、それでも<L>が世界一の探偵であり続けられたのは、その卓越した捜査能力があったればこそだ。だがメロは、Lの出生に関わる秘密やリヴァイアサンという組織の存在を知った今となっては、こう思う。Lが『盾』とする人間と命の危険をともにするほどの覚悟で、いつも事件の解決に当たろうとする姿勢にはやはり<嘘>などなかったのだ、と。この世界を影で操っているといってもいいほどの巨大な組織――リヴァイアサンを倒しうるとすれば、<L>をおいて他にはいない以上、彼は常に万が一のことを考え、何があっても死ぬというわけにはいかなかったのだから……。
 ただし、今の戦況を見るかぎり、「チェックメイト」というわけには決していかないであろうこともわかりきっていることだった。いってみれば、ようやく<L>は駒の配置を終えて、<K>――Kingにこれから挑もうとしているようなものだ。そしてクイーンがニアなら、ルークは自分といったところだろうか……いや、クイーンという駒の万能性を考えるとすれば、メロは自分をそれに例えたくもあるのだが、自分が<L>のために彼に最後までついていく以上、その座は一旦ニアに譲っておくしかない。そしてナイトがセスといったところだろうか。
(このゲームにもし、勝ちうるとすれば、だ)と、メロはパソコンのモニターの前で、同時進行しているふたつの事件のファイルを開き、さらにその画面の片隅――そこに小さく開かれたファイルで、コンピューターとチェスゲームをしながら考える。(犠牲にする駒のひとつもなく勝てるゲームなどないということになるんだろうな……)
 ラスの元恋人、カイ・ハザードにはおそらく、そのことがよくわかっていたはずだと、メロはいまさらながらに思う。そして彼は確かに<必要最低限の犠牲>で、<必要最大限のもの>を自分やニアやLから引きだすことに成功したのだ。
(あんたのやり方は、確かに見事だった……その上、自分の遺体が解剖されることで、新薬開発に貢献できる可能性も見越していたんだろう。まったく、嫌になるほどあんたの手法はLに酷似しているな)
 上には上がいるとはよく言ったものだが、もし仮にこのカイ・ハザードというセスさえも自分より能力が<上>だと認める男が生きていたとしたら――純粋に能力的な意味だけでなく人間性も考慮した場合、彼がもっとも<Lを継ぐ者>に相応しかったのではないかと、メロは思う。口にだしては決して言いはしないが、おそらくニアもそのことは感じているだろう。そしてカイが選ばれたのは、<L>のような善の側の組織ではなく、<殺し屋ギルド>という悪の側の組織によってだった。だが、自分のように善悪の狭間で苦しむ人間を今後出さないためにも――彼は最後に善の側にいると思われる<L>に、ギルドという組織を委ねたいと願ったのではないだろうか?
 カイ・ハザードという青年の死が残した影響がいかに大きいものだったかは、単にラスのことだけではなく、他の超能力を持つ者たちのことを見てもよくわかることだった。セスのようにプライドの高い人間が、「彼は僕よりも遥かに<上>の人間だった」というあたりからしてそうだし、先ほど彼に近いうちに話し合いの場を持ちたいとニアが言った時にも――「そうだね。ラケルと兄さんがいない間というのは、僕にとっても好都合だ」とセスは言っていた。
「カイが死んだのは、言ってみれば新薬開発のためだからね。そのためには僕らにも、ある程度の協力と妥協が必要になってくるだろう。たとえば、僕たちが持っているこの能力を生かして、<L>が必要とする時に特別警察のような形で出動するとかね……でも、僕が思うに、Lが言いたいのはどうやらそういうことじゃなさそうだし、その程度のことでいいなら、とっくに取引材料のひとつとして口頭で僕に伝えているだろう。けどまあ、なんにしても僕の兄さんはそういうことに不向きだってことは先に言っておくよ。力だけとってみたとすれば、兄さんのボーはティグランの念動力よりも上をいくだろうけど、兄さんはあの力で人を殺したことがトラウマになってるからね。必要以上に超能力を使うことで、その部分の記憶を揺さぶられては困るんだ」
「なんだって?ボーは俺には、あの力で人を傷つけたことはないと言っていた気がするが……違うのか?」
 携帯電話でニアから部屋に呼びだされたセスは、Lが出ていった後のその場所で、数百冊もの蔵書を手にとりながら、その上の埃を息で払っている。
「まあ、何しろ戦争中のことだからね……あのセルビア人の兵士どもを兄さんが自分の力で殺さなかったとすれば、僕も兄さんも施設の他の子供たちも全員、死んでいたろうな。民族浄化っていうのは、ようするにそういうことだから。けど、兄さんが僕らを守るために力を使ったにせよ、それが人殺しであることにかわりはない。一度に何十人もの人間を一瞬にして殺したっていうのは、兄さんの精神が耐えられるようなことじゃなかったんだよ。だからカイは孤児院にきた兄さんのことを深い暗示にかけて、その部分の記憶をまず真っ先に抹消したんだ。抹消した、なんて言ってもね、その部分が空白になったことの反動というのか後遺症というのか、何かそうしたものが残るものなんだよ。だから兄さんは力を使ったあとは必ず重い罪悪感に苛まれることが多いし、力を使いすぎると過去の記憶が今後甦らないとも限らない――そういったわけで、君たちが<L>から何をどこまで計画として聞かされているか知らないが、兄さんのことはその計画から外して考えてくれないか」
「わかりました、セス・グランティス」と、ニアがガンダムのプラモデルに塗装をしながら答える。「そもそもLは、あなたたちが協力するもしないも、最終的な決定権はあなた方自身にあると考えているようですから……その結果いかんによって計画の立てなおしを行うことにするんじゃないかと思いますよ。基本的にはおそらく、あなた方のうちの誰の能力をも必要とないプランがLにはあるんだと思います。ですが、カイ・ハザードが決して目先の損得で自分の命を犠牲にしたわけではないように、あなたたちのうちの何人かはLについていくことを了承するだろうというのがわたしの見方ですが、どうでしょう?」
「どうでもいいけど、シンナーくさいから窓を開けてもいいかな?」
 セスはレースのカーテンのかかった瀟洒なフランス窓を開くと、そこで自分が手にした本――ホメロスのオデュッセイア――の埃を叩いて払っている。
「まあ、少なくとも僕は、<L>についていくつもりはないよ。君のその遠まわしな言い方から察するに、何やら命の危険がつきまといそうだからね……それに僕自身は<殺し屋ギルド>の内部情報を君たちやLに与えることによって――例の新薬と十分見合うくらいの取引材料になっているはずだと思ってるからね。その点について譲歩するつもりはまったくないってこと、よく覚えておいてほしい」
 最後に、「この本借りてくけど、いいかな?」とセスは言い、ホメロスのオデュッセイアを手にして彼はニアの部屋を出ていった。
「メロ、寒いので、窓を閉めてもらえませんか?」
「……命令すんなっ!っていうか、自分の部屋の窓くらいおまえが自分で閉めろ!!」
 ――まあ、そのあとすぐにメロもまたプラモ作りに夢中になっているニアをひとり置き、バロック様式の部屋を出たわけだが、セスの言っていることは至極真っ当であり、やはり自分が彼の立場でもまったく同じことを言っただろうとメロは思った。
 そうなのだ。<殺し屋ギルド>の裏情報がほとんど手に入った状態の今、その見返りとして新薬を手に入れる資格がセスたち超能力者にはあるし、それ以上のことを求めるのは無理があるともいえただろう。そして自分がいかにLに協力すると言ったとはいえ、自分ひとりだけでは足手まといになる可能性があることを考慮したとすれば――やはり彼らのうちの何人かが自主的に協力してくれる必要があるとメロは考える。
(じゃなかったら、ある日突然Lの姿が消えて、二度と戻ってこないっていう可能性もあるからな……)
 最後に黒のビショップによってメイトとなり、メロがコンピューターに勝った時――コンコン、と部屋のドアがノックされた。木製の樫材で出来たドアが、どこかくぐもったような音を立てている。
「誰だ?」
「あたしだけど……ちょっといい?」
(ラスか)
 そう思ったメロは、チョコレートをパキリと齧りながら、ドアの鍵を開けた。特に深い意味はないが、部屋にいる時はいつも、彼は鍵をかけている。
「なんだ?何か用か?」
「用ってほどのことでもないけど」と、ラスは内心溜息を着く。そうなのだ――この城館へ来てからというもの、このセリフを一体何度聞いたことだろうとラスは思う。自分が誰かに話しかけるのも、誰かが自分に話しかけるのも、彼は基本的に<用がある>時のみなのだ。
「……相変わらず、陰気な部屋ね。二階にはもう少しましな部屋がいくつかあったと思うけど、なんでここがいいわけ?」
「べつに、深い意味はない」
(っていうか、そこで会話終わらせないでくれる!?)
 ラスはもう慣れたとはいえ、今でも時々メロとはもしかして相性が合わないのではないかと思うことがある。そして(カイだったらこんな時……)とか(カイだったらそんなこと言わないわ)と比べている自分に気づき、自己嫌悪に陥るということを繰り返していた。
「まあ、あたしがこんな話をしてもメロは『俺には関係ない』とかって言うんでしょうけど、一応話しておくわ」
 部屋に人数分のベッドが足りなかったため、ティグランとメロの部屋のみ、町の家具屋で購入したベッドが置かれていたのだが――「寝れればなんでもいい」というメロの趣向によって、この部屋には刑務所に置かれているような堅いパイプベッドが片隅を占めているのだった。
「この間の定期検診で、エリス博士に言われたのよ。いいバイオ皮膚があるから、手術を受けないかって」
「手術って……ようするに、火傷の痕をそれで治すってことか?」
「そういうこと」
 ギシリ、とベッドに腰かけ、ラスはアンティークな机の椅子に座るメロのことを軽く見上げる。
「まあ、俺にはなんとも言えないな。それはラスが決めることだし、おまえの好きなとおりにしたらいいだろ?」
「そう言うと思った」
 ラスは軽く溜息を着くのと同時に、ベッドから腰を上げる。今は冬で、長袖の衣類を着ていてもどうということはない――だが、真夏に半袖の服が着れるようになるというのは、彼女にとって確かに魅力的なことではあった。それでも、どこか心の隅のほうで思い切ることが出来ないのは……メロもカイも、自分のことをありのまま受け容れてくれたからだろうとラスは思う。そして、最初は二十歳前後で死ぬとこれまで思ってきたために――肉体が美しかろうが醜いままたろうが、とにかく今のあるがままで生きることにしようと決めたのだ。それなのにここへきて、延命の可能性について告げられ、この火傷を負った体とこれから先さらに何年もつきあっていくことになるかもしれないと言われたのである。ラスが今持っている心の迷いは、あって当然といえるものだった。
「じゃあ、仕事の邪魔したわね。それと、夕ごはんの支度できてるって、ラケルから伝言。今日はローストチキンのグレイヴィソース添えだから……あんた、それが好きなんでしょう?」
「ああ」
 パソコンの画面に見入りながら、パキリ、とチョコレートを齧る自分の恋人らしき男を、ラスは溜息を着きながら一瞥して、部屋を出ていこうとする。けれど、彼女がドアに手をかけた時、メロは最後にこう言った。
「俺は、ラスの体に火傷の痕があろうがなかろうが、基本的には関係ないと思ってるが……それでも、もしおまえにそれがなかったら、特に惹かれることはなかったかもしれないな」
「どういう意味?」と、ラスは一瞬振り返る。
「さあな。単になんとなくそんな気がしたってだけだ。まあ、気にしないでくれ」
「……………」
(あんたって男は、まったくもう!)
 ラスはメロの部屋を出ると、肌寒い廊下を通って中央階段へ向かおうとした。そしてコの字型になっているその正反対側の部屋へ、ティグランが向かおうとしているのと擦れ違いになり――彼女は思わず言葉を失う。
 自分が今、ほんの一瞬でも幸せだと感じたことに、罪の意識にも似た感情を覚えたからだった。実際のところ、覚悟していたこととはいえ、ラスが支払うことになった代償は決して小さなものだったとはいえない。針のむしろ、とまではもちろん言わないにしても、苦しみの伴う幸福、とでも言えばいいのだろうか……カイの時とは違って、メロとの関係というのは仲間全員に祝福されているとは当然いえない。そのことがラスは、時々つらくてたまらなくなることがあった。
 まず、第一にティグラン――彼はルーのことで自分を恨んでいる。いや、実際どうだったかは別にしても、少なくともラスはそう思いこんでいた。ロサンジェルスで合流して以来、彼とはほとんど口も聞いていなかったし、自分に対してだけでなく、誰に対しても同様の態度をティグランはとっていた。そしてルー……ラスがメロとのことを率直に打ち明けた時、彼女は「わたしたち、これからもずっと親友よね?」とそう言ってくれた。けれど、自分が話す前にエヴァが間を取りなしてくれたということもラスは知っていて――うまく説明はできないけれど、彼女たちと自分の間に、ある種の壁をラスは感じるようになっていた。
 セスは最初に「居心地の悪そうな君の顔を見て、楽しませてもらう」と宣言したとおりの態度をとっていたし、自分がリビングに顔を見せるとパッと人が誰もいなくなるということも時々あった。そして最後にそこに残ったのはセスとラスだけで「さてと、僕も仕事の続きをしよう」などと言って、彼は意地悪な眼差しをチラと自分に向けたりするのだ。
(これが、君の支払うべき代償なんだよ)
 ――ラスは彼にそう言われている気がしてならなかったが、こうしたことはおもに、ルーとラスがリビングで顔を合わせる時に起きることだった。まずルーが「勉強」を理由にいなくなるため、彼女のその気遣いを不憫に感じた誰か彼かがいなくなるといった空気になる。エヴァは誰に対しても、カイと同じく博愛精神で優しく接するといった感じの少女ではあったが――それでも心情的にはルーにより同情しているのだということが、ラスにはわかっていた。つけ加えていうとしたら、こうした事柄に関してメロはさっぱり相談相手にはならない。
 そんな中でラスにとって救いになる唯一の存在は、ラケルだった。彼女が自分たちについて、どこまでのことを詳しく知っているのか、ラス自身にもいまだにわからない。けれど、とりあえずリビングにラケルの存在さえあれば、ラスは安心だった。仮にセスがその場に居合わせても、彼女がなんとかしてくれるという絶対の信頼感をラスは持つことができるし、ラケルがいれば他の仲間たちも自然とその場に残っていることが多いのだ。
「前に、メロやニアと一緒に暮らしてたってほんと?」
 彼らが彼女に対する時の、ある種の気安い敬意とも呼ぶべきものにラスは気づいていた。さらには、セスさえも――彼女には尊敬に値するべきものがあると評価しているらしいのを見て、ラスは一度ラケルにそう聞いたことがある。
「ええ、ほんと。あの子たちは困ったちゃんだったけど、あなたたちは本当にみんないい子で助かるわ」
「その、どうやって仲良くなったの?ふたりとも、ある意味物凄い問題児だと思うんだけど……」
「さあ?よくわからないけど、真心をこめて接してれば、大抵の子は心を開いてくれるんじゃないかしら?」
「……………」
 ――とりあえずその時ラスは、(答えになってないような……)と思いはしたものの、今ではなんとなくその答えがわかるような気もする。彼女が中心にいる場所は、とても温かくて優しくて、いつまでもそこにいたいような居心地のよさがあるのだ。たとえて言うとすれば、母親の胎内のそれに似ているとでもいえただろうか。
 ラスは他の施設の仲間とは違い、一応十歳になるまでは母親に育てられたという経験がある。もしかしたらだからこそわかるのかもしれないが――ラケルの持っている雰囲気は<母性>そのものであり、ラスには何故彼女がLのような男性を選んで結婚したのかもわかるような気がしていた。
「あんな変態……いえ、変人と何故結婚したんですか?そんなに切羽詰ってたんですか?」とセスが冗談半分に聞いたことがあるけれど、対する彼女の答えは、彼が自分を必要としたから、というものだった。
(わたしは、メロに必要とされてる……?)
 それに、他のみんなにも……そう思うとラスは、時々胸が詰まったように苦しくなることがある。エヴァにはピアノが、ルーには数学があったけれど、自分にはそういう意味での取り得と呼べるものは何もない。部屋にひとりでいても憂鬱になるだけなので、出来るだけラケルのことを手伝ったり、彼女から裁縫や編み物を習ったりもしているけれど――包丁をうまく扱って料理できないのと同じく、そちらの天分もラスにはまるでないのだった。
 それでも唯一、ビーズでアクセサリーを作るやり方を覚えてからは、「わたしよりも上手いわ」とラケルに褒められるようになってはいたけれど……それで今は、ルーやエヴァに似合いそうな花の形の首飾りや真珠の指輪を作ったりしている。もちろん、そんなこと程度で「許してもらおう」とはラス自身思ってもいない。それでも――イラクのお土産としてスカーフをふたりにプレゼントした時みたいに、彼女たちが笑ってくれたらそれで十分だと、ラスはそう思っていた。



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【2008/09/24 07:17 】
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